特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第9回

羽生結弦の登場で、「役者はそろった」。私はすっかり号泣の準備万端です……

高山真
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 平昌オリンピック、フィギュアスケート団体戦の2日目は、アイスダンスのショートダンスと女子シングルのショートプログラム、ペアのフリーがおこなわれました。

 私はアイスダンスが本当に好きです。今回、素晴らしい解説をなさった河合彩氏の言葉を借りれば、

「エッジの1点に乗ってスーッと滑っていく感じ」

 の宝庫。加えて、エッジのなめらかすぎる切り替えが、プログラム全編にわたって詰め込まれている。

 フィギュアスケートというスポーツの「私のツボ」は、その語源どおり「スケート靴のエッジで氷に図形を描く」こと。その意味で、アイスダンスはもう眼福の連続なのです。団体戦に出場した10組の演技も、本当に楽しかった……!

 オールドファンにとっては、トーヴィル&ディーンの『ボレロ』(Torvill&Dean 1984 Olympics FD)や、ベステミアノワ&ブーキンの『カルメン』(Bestemianova&Bukin 1985 Worlds FD)、グリシュク&プラトフの『レクイエム』(Grishuk&Platov 1998 Olympics FD)、アニシナ&ペーゼラの『カルミナ・ブラーナ』(Anissina&Peizerat1999/2000 GPF FD)など、忘れがたいプログラムがいくつもあります。

 今シーズンも戦ってくれているヴァーチュ&モイヤーが、バンクーバー五輪で滑ったマーラーの交響曲第5番(Virtue&Moir 2010 Olympics FD)も、もう……! ヴィスコンティの『ベニスに死す』は、私のオールタイムフェイバリット映画のベスト10に必ず入ってくる映画。死の誘惑がひたひたと水位を上げていくような『ベニスに死す』とはまた違う、胸の中に爽やかな風が吹きわたるようなクリアなエッジワークが素晴らしかった……!

 そのヴァーチュ&モイヤーと、個人戦に出場してくる、フランスのパパダキス&シゼロンが、お互いにどのような「世界」を出してくるか、本当に楽しみです。この二組に関しては、「どちらが勝つか」などということを云々するのは野暮だと思っている私。この二組の演技を自分なりに精いっぱい堪能するのが「礼儀」かな、と思い、気持ちを高めています。

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特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

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プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
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羽生結弦の登場で、「役者はそろった」。私はすっかり号泣の準備万端です……