特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第12回

オリンピックで金メダルを獲ることの難しさを、メドベージェワに教わり、涙……

高山真
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平昌オリンピックのフィギュアスケート女子シングル、私は病室のベッドで見ていました。

病気になって以来、こういうことは想定に入れて生活しているので、精神的にはたいしたダメージはありません。

が、体力的にはずいぶん削られてしまったかも……(いい意味で)。

私がオリンピックのフィギュアスケートにどっぷりハマるようになったのは1980年からですが、今大会の女子シングルは(男子シングルも、ですね)、ショートもフリーも、私にとっては五輪の歴代のシングルの試合でナンバーワンと言ってもいいかもしれません。

「会心の出来」に、選手たちが両手を突き上げたり満開の笑顔になったり……、そんなシーンが本当に多かったような気がします。

 

ただ、「会心の演技ができた人が、メダルに(あるいは、望む順位に)届かない」という厳しさ、難しさをもっとも感じたのも、今大会かもしれません。

「順位に物申す」つもりは決してないのですが、エフゲニア・メドベージェワのあのショートとフリーに、金メダルが渡されない厳しさ! 音楽とエッジワークの濃密な一体感、そしてジャンプ前後のトランジションは、エッジだけでなく上半身でもきちんと音楽を伝えている……。ただただ、感嘆のため息がもれました。

ザギトワの爆発力ももちろん特筆すべきです。ただ「爆発した」だけでなく、

「えらいこっちゃなバックインエッジから、踊りの要素をこなすかのように、えらいこっちゃなバックアウトエッジにチェンジエッジしてから跳ぶ」

という、トリプルルッツ前のトランジション、そこからダイレクトにトリプルループのコンビネーションにしていく強さ。「すべてのジャンプをプログラム後半に固め打ち」していることが話題になっているザギトワですが、そんなプログラムでも、ほぼすべてのジャンプの前にコネクティングステップが入っているのも凄まじい……。

 

「順位に物申す」つもりは決してないのですが、今大会の男子シングルと女子シングルとアイスダンスでは、メダルがもう1枚あってもよかった、とまで思ってしまう私です。

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特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

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プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
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オリンピックで金メダルを獲ることの難しさを、メドベージェワに教わり、涙……

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