特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第13回

羽生結弦が歴史を刻んだ「平昌のショートプログラム」を振り返ってみた

高山真
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  平昌オリンピックが終わって2ヵ月あまり経ちました。振り返ってみると、「本当に奇跡のような時間だった」と思うばかりです。男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンス、すべてのカテゴリーで、あれほど密度の濃い試合を観ることができたのは、スケートファンとしてこのうえもない幸せだったと、今でも思います。

  男子選手でいえば、パトリック・チャンに「オリンピックの金メダリスト」の称号がついたこと(カナダが団体で金メダル)、そして、羽生結弦が男子シングルで二連覇を成し遂げたこと……。チャンも羽生も、私にとっては「超」がつくほど好きなスケーターですから、両方の結果に心からの拍手を送ったものです。

 

  オリンピックで羽生結弦が見せてくれた演技を、私は今でも折にふれ見返しています。ショートプログラム、フリーとも、何度も繰り返し鑑賞するに値する、驚異的なプログラムですが、今回は、「羽生結弦のショートプログラムの素晴らしさ」を改めて振り返ってみたいと思います。

  1月に発売した拙著『羽生結弦は助走をしない』で書いた「平昌シーズンの、羽生の演技のツボ」と重複する部分があることをご了承ください。この本の中で、私は2017年のオータムクラシックの演技に対して、自分なりの考察をしています。オータムクラシックの羽生結弦のショートプログラムは、男子シングルの世界歴代最高得点の演技ですが、平昌ではケガからのブランクがあったにもかからず、その名演技と同じ構成、難度のプログラムを完ぺきに実施しました。

  ショートプログラムが終わった瞬間の、

「ひとつめの奇跡を、この目で見た」

 という私の感想は、決して大げさではなかったと思います。

 

  羽生結弦の平昌オリンピックのショートプログラム、使用した曲は『ショパン バラード第1番』。

  ピアノの音符ひとつひとつとピッタリとシンクロする羽生結弦の足さばき。なんと言えばいいか……、

「氷そのものが大きなピアノで、羽生結弦のエッジが、その大きなピアノの演奏している」

 というイメージです。

  そして、プログラム全体から羽生が放つ雰囲気も、ショパンのピアノ曲のイメージに合わせている。

「ひとつひとつの足さばき」も「足さばきの集合体としての、全体の雰囲気」もシンクロしているわけです。見事な二重構造だと思います。

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特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

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プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
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