特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第16回

『羽生結弦は助走をしない』著者・高山真が振り返る、羽生結弦の平昌五輪フリーの「奇跡」

高山真
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Clip to Evernote

●一度左足にグッと体重を乗せてから、踏み切り直前にその体重を右足のアウトエッジに乗せ換えて跳ぶトリプルループをはさんで、最後のジャンプのトリプルルッツ。

 ショートプログラム、フリーを通じて唯一、回転の途中で軸がぶれてしまったこのジャンプの着氷を、ギリギリでこらえてみせた意地。

 本来ここは、ルッツの着氷から、フライングの足替えシットスピンにダイレクトにつなげる構成ではないかと思います。2014~15年シーズンの『SEIMEI』ではそういった構成ですし、2017年ロシア杯での最後のジャンプの要素、トリプルアクセルからもダイレクトにフライングの態勢に入っています。しかし平昌では、「フライングの態勢が整うまでの間、ほんの一瞬ではあるけれど、待った」ように見えました。

「ジャンプのGOEが下がるのは仕方ない。でも、スピンのレベルまでは落とさない」

 という判断があったように感じたのです。ここにも羽生の瞬時の冷静さを見た思いです。

 

●コレオシークエンスにおける、激情の表出。

 ギリギリの状態であることを受け入れ、「冷静と情熱の間」を破綻なくコネクトしてきた羽生の気持ちが、このコレオシークエンスでは「冷静さを突き破って情熱が出てきた。それもいちばん激しい形で」というイメージだったのです。

 その気持ちを(私が勝手に、ではありますが)感じて、最後のコンビネーションスピンは視界がにじんでよく見えませんでした。

次ページ  宝物としての記憶
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
 第15回
特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

関連書籍

羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界

プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
集英社新書公式Twitter 集英社新書Youtube公式チャンネル

プラスをSNSでも

Twitter, Youtube

『羽生結弦は助走をしない』著者・高山真が振り返る、羽生結弦の平昌五輪フリーの「奇跡」

;