特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第16回

『羽生結弦は助走をしない』著者・高山真が振り返る、羽生結弦の平昌五輪フリーの「奇跡」

高山真
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 ショートプログラムもフリーも、最後のコンビネーションスピンは涙でかすんでしまった私です。ショートプログラムは「ここまで戻してくれた!」という涙でした。フリーは「これほど厳しい状態の中でも、ここまでのものを見せてくれた!」という涙でした。

 2017年NHK杯の公開練習で羽生結弦が負傷してから、平昌オリンピックが開幕するまでの間、私は、

「羽生結弦が平昌で素晴らしいパフォーマンスを披露することを露ほども疑っていない」

「いままでにも、羽生がこちらの予想をはるかに超えるパフォーマンスを何度も披露してくれたことを、この目で見てきている。その厳然たる事実が、絶対的な信頼になっている。今回(平昌)も、そうなる」

 と書いてきました。そして羽生結弦は、平昌でも私の予想をはるかに超える感動をもたらしてくれました。

 羽生結弦は、オリンピック二連覇という「記録」とともに、「一生、私の心のジュエリーボックスに入れておける宝物」という「記憶」を残してくれたのです。「宝物としての、記憶」は、このエッセイを読んでくださっている読者の方々ほとんどの心の中にもあるのでは、と勝手ながら思っています。

 

 2018~2019年シーズンがもうすぐ始まります。前シーズンの男子シングル、女子シングルのオリンピックチャンピオンと銀メダリスト、4人が4人とも、次のシーズンも競技者としてフィギュアスケートを続ける……。私にとっては記憶にないほど贅沢なシーズンの幕開けがもうすぐなのです。

 そんな決断をしてくれたスケーターたちに感謝しつつ、競技者としての幕を平昌でおろしたスケーターたちの歩みにも心から感謝しつつ、新しいシーズンを待ちたいと思います。

 採点システムの変更がニュースなどでも取り上げられています。しかし私は、一観客として、それぞれのスケーターとコーチが、新しい採点システムの中で織り上げた「哲学」を、その「哲学」が作り上げた「このうえもなく美しいダイヤのネックレスの新作」を、ただただ楽しみに待っていたい。そんな思いでいるのです。

 羽生結弦をはじめ、すべてのスケーターは、自らのフィギュアスケート哲学を、もっとも美しい形にするために、たゆまぬ努力を続けています。何よりもその努力を最大限にリスペクトしたい、という私の気持ちは変わることはありません。

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 第15回
特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

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プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
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『羽生結弦は助走をしない』著者・高山真が振り返る、羽生結弦の平昌五輪フリーの「奇跡」

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