特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第17回

「息絶える白鳥」ではなく「生きていく白鳥」として……羽生結弦の24時間テレビ『ノッテ・ステラータ』から受け取ったもの

高山真
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●音楽が始まって20秒後から始まる、左足のフォアアウトサイドエッジを使った大きなカーブ。この大きなカーブに入る直前に、インサイドエッジからアウトサイドエッジに非常にシャープにチェンジエッジしている。チェンジエッジしたあとにむしろスピードが上がること、そしてチェンジエッジしたあとの距離の出方、どちらも素晴らしい。

●腕の振りの勢いではなく、筋力のみで見事な背中のアーチを作る、レイバックイナバウアーの完成度。

●両足ともバックインサイドにして、上体を斜め後ろにひねった状態にしてカーブを描くムーヴのバリエーション。私はこのムーヴが大好物でして、ミシェル・クワンの1997年世界選手権のフリー(Michelle Kwan 1997 Worlds FS)は、このムーヴが見たくてリピートしているくらいです(トリプルフリップの着氷後です)。

●それぞれに美しいポジションでおこなうコンビネーションスピン。ビールマンスピンに行く直前のキャッチフットの際に、グッと回転速度が上がるのが個人的にはものすごく好き。そして、非常に距離の長いハイドロブレーディングへ。

●そしてそこから、ほとんど間髪入れずに、「左足をフォアエッジにしたインサイドのイーグル」→「ターンをはさんで、右足をフォアエッジにしたインサイドのイーグル」→「またターンをはさんで、もう一度左足をフォアエッジにしたインサイドのイーグル」へとつないでいく。そのなめらかさと、足の開き方の厳密さ。

●シットポジションのツイズルとインサイドのイナバウアーの組み合わせの妙。現在のルールでは競技プログラムで見ることは難しいだけに、エキシビションで披露してもらう喜びがあります。

●ディレイのシングルアクセルの大きさ! このジャンプのための助走が、次のトリプルアクセルのための助走よりも明らかに長いのは、いかにこのジャンプをドラマティックに見せようとしているかの表れだと思います。

トリプルアクセルに入る前にターンの連続を入れ、着氷後にもただちにツイズルへとつなげるテクニック。ジャンプに入る前のトランジションは、平昌五輪のエキシビションからこのターンを組み入れたのではないかと……。跳ぶ前も着氷した後も、そのトランジションにいったいどれだけのバリエーションを持っているのでしょうか。

●ラストのスピン。キャメルポジションのまま上体を天井のほうにそらしていくポーズ。これだけでも難しいポジションなのですが、ここからさらに、ひざを曲げて回転をキープします。

「軸足のひざを途中で曲げていく」ということは、「回転しながら『体重をかけるポイント』を意識的にずらしていく」ということです。回転が乱れるリスクが飛躍的に上がってしまうわけです。

 ベーシックなキャメルスピンでこのポジションの変化を取り入れるのは、伊藤みどりもさまざまなプログラムで披露していますが、難しいポジションによるキャメルスピンの間でこれを入れてくるとは……!

 そして、こういった「スケート」を実施している間、上半身、特に「アーム」は、一本芯が入ったようなしなやかさ、たおやかさをキープしたままになっている。このプログラムを見て「白鳥そのもの」というご感想を持つ方が多いのも当然と思わせる素晴らしさだと思います。

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特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

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プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
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「息絶える白鳥」ではなく「生きていく白鳥」として……羽生結弦の24時間テレビ『ノッテ・ステラータ』から受け取ったもの

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