特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第19回

想像を絶する難易度! オータムクラシックの羽生結弦のプログラムに込めた「思い」とは…

高山真
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 フィギュアスケートの2018~19年シーズンが始まりました。以前にも書きましたが、このシーズンは私にとって、「オリンピックの男子シングルと女子シングルの、金メダリストと銀メダリストの4人が、プロ転向や休養することなく競技を続けてくれる、記憶にないほど贅沢なシーズン」です。

 平昌五輪の男子シングルの金メダリスト、羽生結弦の今シーズンの初戦は、カナダで開催されたオータムクラシックでした。ショートプログラムは『Otonal』。これはジョニー・ウィアーの2004~05年シーズンおよび2005~06年シーズンのフリーと同じ曲を使用した作品。そしてフリーは『Origin』。エフゲニー・プルシェンコの2003~04年シーズンの伝説のフリープログラム『ニジンスキーに捧ぐ』にインスピレーションを受けての作品です。

 最初に、何よりも声を大にして言わなくてはいけないことを記します。フィギュアスケートという競技のファンとして、羽生結弦というスケーターのファンとして、羽生結弦が今シーズンも競技を続けてくれること自体、私にとってはものすごくありがたいことです。

 私がフィギュアスケートを見始めたのは1980年です。そこから「オリンピックを連覇したスケーター」をこの目で目撃したのは、女子シングルのカタリナ・ヴィット、アイスダンスのオクサナ・グリシュク&エフゲニー・プラトフ(グリシュクは長野五輪のときには「パーシャ」というファーストネームの表記でした)、そして男子シングルの羽生結弦だけです。

「2個の金メダルを獲得したスケーター」というふうに枠を広げても、ペアのエカテリーナ・ゴルデーワ&セルゲイ・グリンコフ(私にとって、ペアスケーティングにおける永遠のアイドルです)と、アイスダンスのテッサ・ヴァーチュ&スコット・モイアだけです。

 もちろん、「オリンピックの金メダルを獲ることだけが、選手に求められている」などとは、これっぽっちも思っていません。そうではなくて、

「オリンピックで素晴らしい成績を収めた後で、休養にあてたりプロに転向したりという決断をしても、誰ひとりそのチョイスを責める人などいないのに、それでも競技を続けるチョイスをしてくれたこと自体、観客にとっての大きな幸せである」

 ということが言いたいのです。

 そんな思いをベースにした状態で観た、オータムクラシックのショートプログラムとフリーの演技。特に感激した部分のいくつかを、私なりに綴っていきたいと思います。

 今回の演技のショートプログラム、フリーとも、演技後の羽生の表情からは「もっともっと自分にはできる」と思っているだろうことが明らかに見て取れました。私としては、羽生自身が演技後に会心の表情を浮かべるパフォーマンスを披露したときに、その演技から受け取ったものを、自分なりに余すところなく書き綴りたいと思っています。その旨ご容赦いただければと思います。

 

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 第18回
特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

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プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
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想像を絶する難易度! オータムクラシックの羽生結弦のプログラムに込めた「思い」とは…

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