特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第19回

想像を絶する難易度! オータムクラシックの羽生結弦のプログラムに込めた「思い」とは…

高山真
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■ショートプログラム

●冒頭の4回転サルコーのトランジション。平昌五輪のショートでは、インサイドのイーグルをテイクオフ前のひとつの見せ場にして、着氷後にただちにアウトサイドのイーグルへとつなげていました。今回は前方に出した左足をアウトサイドにするイナバウアーを、テイクオフ前の見せ場に。

 サルコージャンプを右足のバックアウトサイドエッジで着氷し、すぐに非常になめらかにフォアのアウトサイドエッジへとチェンジ。そして、そこからイナバウアーまでの一連の流れ……。この距離の出方とエッジワークのシームレスな連続。見事というほかありません。

 

●アウトサイドエッジからインサイドエッジへと移行していくイーグルをはさみ、ターンの連続の中でおこなうトリプルアクセル。着氷後、ただちにツイズルへ。

 以前、羽生のトリプルフリップを、「ターンをおこなう中で、フリップだけ空中に浮いてターンを実施しているように見える」と書いたことがありますが、それをトリプルアクセルでも見せてくれる喜び……。

 このトリプルアクセルの前後、特にテイクオフ前のトランジションは、今年の日本テレビの24時間テレビ「愛は地球を救う」内で、福島・楢葉町の被災者の方々を仙台のリンクに招待しておこなった演技のトリプルアクセルと共通するムーブかな、と思います(平昌五輪のエキシビションも、ですね)。

 被災者の方々に披露するエキシビションを、競技プログラム並みの難しさで実施する。ここに、羽生結弦の「思い」が表れているような気がするのは、私だけでしょうか。

 

●プログラム全編にわたる、ピアノの音とエッジワークの融合。その説得力の高さ。

 イナバウアーやイーグルのようなムーヴス・イン・ザ・フィールドと呼応するかのような、ピアノの美しく伸びる音。繊細なタッチの高音に合わせて、スッとバックエッジからフォアエッジに変わる見事さ(これらは平昌五輪のショートプログラム、ショパンの『バラード 第1番』にも共通する印象です)。

 また、華やかにこぼれるようなピアノの音とマッチした、足替えシットスピンの前のターンの連続や、オーケストラのドラマティックな旋律にはめてきた、ハイドロブレーディングのあとのジャンプなど、新しいプログラムならではの驚き、喜びが随所に見られました。

 

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 第18回
特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

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プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
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想像を絶する難易度! オータムクラシックの羽生結弦のプログラムに込めた「思い」とは…

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