特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~ 第19回

想像を絶する難易度! オータムクラシックの羽生結弦のプログラムに込めた「思い」とは…

高山真
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 ショートプログラムとフリーを鑑賞したところで、私にはある感慨が生まれました。

 羽生結弦は、8月の終わりにメディアの共同取材で、

「これからは自分のために滑ってもいいのかなと思った」

 という言葉を残しています。私はいまになって、

「羽生結弦というスケーターにとって『自分のために滑る』というのは、『誰よりもよくわかっている“現時点での、自分の限界”を超えるスケートをしたい』という意味なのかもしれないなあ」

 と、よりクリアに感じています。「4回転のアクセルを跳びたい」という目標も、そのひとつなのでしょう。

「勝ちたい」という言葉は、競技会における順位以上に、「いままでの自分ができた、ベストの演技より上に行きたい」という意味で私はとらえているのです。

 いずれにせよ私個人としては、羽生結弦の思いを100%尊重しつつ、ただただ健康第一でいってほしいと願うばかりです。

 

 今シーズンは、採点基準の変更や、男子シングルとペアに関してはフリーの演技時間の短縮があるなど、選手たちがさまざまな変化に対応しなくてはいけないシーズンでもあります。男子シングルのフリーは、演技時間が30秒短くなり、ジャンプの要素が8つから7つになりました。

 シーズンが開幕する前は、

「時間が短くなった分、選手たちの負担は少なくなるのかな」

 と思いましたが、いざ蓋を開けてみると、むしろその逆の印象を抱きました。

「時間が短くなった分、密度をさらに上げなくてはいけない」

 と選手とコーチたちは判断したのでしょう。羽生結弦だけでなく、ほかの選手たちもフリーの演技が終わった後で、それまでには見られなかったほど疲労困憊な様子が見て取れました。

 羽生結弦の演技も、オータムクラシックの出来映えよりもはるか高いところにハードルを設定しているのは間違いないと思います。それを見せてくれたとき、羽生結弦が会心の笑みやガッツポーズを見せてくれたときの演技を、もっともっと詳しく振り返る機会がありますように。

 そして、羽生結弦だけではなく、たくさんの素晴らしいスケーターたちが見せてくれるものを書く機会がありますように。フィギュアスケートを愛する皆様と、驚きや喜びを分かち合える。そのことは私にとって、大きな幸せのひとつです。

 その機会を作るため、今後も自分なりに努力を続けたいと思っております。近々、何かしらのお知らせができますように。

 

 

 

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特設エッセイ『羽生結弦は助走をしない』~羽生結弦を語り足りない~

長年フィギュアを見続けてきた生粋のスケートファンである高山真が、 超絶マニアックな視点で語る『羽生結弦は助走をしない』(2018年1月17日発売)。まだまだ羽生のスケーティングを、そして日本フィギュアを語り尽くします!

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プロフィール

高山真
エッセイスト。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業後、出版社で編集に携わる。著書に『恋愛がらみ。不器用スパイラルからの脱出法、教えちゃうわ』『愛は毒か 毒が愛か』など。
 
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