対談

1億人が集まるインドの奇祭「クンブメーラ」奮戦記

名越啓介×辛酸なめ子対談
名越啓介×辛酸なめ子

──泊まる場所や食事はどうしていたんですか?

辛酸:ツアーを主催していたヨグマタさんとパイロットババという聖者が、日本や海外から来た人用の大きな宿泊施設を用意してくださって。

 食事はキャンプ内にある立派な食堂でベジタリアンフードを食べさせていただきました。ここだけじゃなく、クンブメーラの会場全体には肉もお酒もなくって。私は全然平気なんですが、男性は厳しかったんじゃないですか?

名越:宗教上の理由で、肉とお酒は禁止ですからね。でも体力の限界を迎えると、とにかく肉が食べたくなって、滞在して11日目に2時間くらいかけてアラハバード駅近くまで食べに行きました。

辛酸:こっそり売っているところもあったみたいですが。

名越:そうですね。2010年の出来事ですが、袋を持って歩いているおじさんがいて、転んだか何かでその袋の中から大量の酒瓶がこぼれ落ちて、近くにいた全員から袋叩きにされていたんです。サドゥから何から、もうグチャグチャの乱闘状態。やっぱりクンブメーラは、ヒンドゥー教徒にとっては神聖なイベントなんだと実感しました。

辛酸:基本的にはどういうものを食べていたんですか?

名越:「チョウメン」という日本の焼きそばみたいなものを一日一食食べていました。あとはチャイでお腹を満たしていましたね。サドゥのテントに行ったら、まずチャイが振る舞われるという感じでした。おいしいチャイを作るサドゥと、そうじゃないサドゥがいる。おいしいチャイは抜群でした。身体に染み渡るというか。ジンジャーとか、いろんなスパイスが効いていて。

 

 

辛酸:そう、チャイとビスケットとか、よくそんな組み合わせでした。名越さんたちはどこに泊まっていたんですか?

名越:1泊1800円ぐらいのテントです。中にベッドがあって、洗面台とシャワーがついているような。

辛酸:それは安い!

名越:でもインド価格では高いのかも。一見、グランピングですが、とにかく水回りから下水臭がひどくて。あと、夜がとにかく寒くて、なかなか寝られませんでした。

辛酸:朝晩は本当に冷え込みましたね。私もダウンを着ないと寝られませんでした。

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プロフィール

名越啓介×辛酸なめ子

名越啓介:1977年、奈良県生まれ。大阪芸術大学卒業。19歳で単身渡米し、スクワッター(不法占拠者)と共同生活をしながら撮影活動を続け、その後、アジア各国をめぐり『EXCUSE ME』で写真家デビュー。主な作品に『SMOKEY MOUNTAIN』(赤々舎)、『CHICANO』(東京キララ社)、『Familia保見団地』(世界文化社、藤野眞功氏との共著)、『笑う避難所 石巻・明友館136人の記録』(集英社新書、頓所直人氏との共著)など。

 

辛酸なめ子:1974年、東京都生まれ。女子学院中・高を経て、武蔵野美術大学短期大学部に入学。1994年、渋谷パルコのフリーペーパー『GOMES』漫画グランプリでGOMES賞を受賞し、これをきっかけに雑誌などに連載を始める。主な著書に『タピオカミルクティーで死にかけた土曜日の午後 40代女子叫んでもいいですか』(PHP研究所)、『魂活道場』(学研プラス)、『おしゃ修行』(双葉社)、『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』(光文社新書)、『辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』(祥伝社)など。 

 

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