著者インタビュー

新人漫画家への心得の書【前編】

『読者ハ読ムナ(笑)』 企画者・武者正昭氏インタビュー
武者正昭

——本書の中では、「打ち合わせで言われた内容を忘れてしまった新人作家」のエピソードが紹介されていました。そうした経験も、この本を企画するきっかけのひとつだったのでしょうか。

武者 それもありますね。私は、ある時を境に新人にはアドバイスを箇条書きに書いて渡すようにしています。そうするようになったきっかけは、今でも覚えているんですけど、ある新人と話していた時に、「先週の打ち合わせでは、いっぱい言い過ぎちゃったけど、その時のことはどれぐらい覚えてる?」って聞いてみたら、「実は、帰りの電車の中では既に10%くらいしか覚えていませんでした」って言われて。「えっ!?  あんなに良いこと言ったのに、ほとんど覚えてないのかよぉ?」「すいません」なんてことになって、それで愕然としちゃって。それから、メモを箇条書きにして、「今日のポイントはこんなこと」って書いて渡すようにしていったんですね。

——打ち合わせの現場だと、編集者にアレコレと言われているうちに頭が真っ白になってしまうこともあるかも知れません。

武者 そうそう。案外覚えていないもんなんですよ。そういうこともあって、やっぱりしゃべるだけじゃなくて、文字に残さないといけないなと。

武者正昭氏(撮影:内藤サトル)

ある時に、誰かに「そういうのは一回まとめた方が良い」って言われて、「少年サンデー」編集部でそういうのを2、3枚にまとめたのかな。「キャラクターはこういう風に考えた方が良い」とか。色々書いたんですが、それを編集部の誰かが持ってずっと保管していて、後にコピーして配ったらしいんですよね。なんか、「武者メモ」とか呼ばれていましたけど(笑)。そんなものが遠い原形かも知れないですね。

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プロフィール

武者正昭

1957年東京都生まれ。早稲田大学卒。1981年(株)小学館に入社。「少年サンデー」「ヤングサンデー」「ビッグコミック」「ビッグコミックスピリッツ」など、これまで編集として数多くのマンガ誌に携わり、「flowers」「Cheese!」では編集長を務めた。編集としてのキャリアは30年を超える。これまで輩出したミリオンセラー作家は、『健太やります!』の満田拓也、『行け!!南国アイスホッケー部』の久米田康治、安西信行、菊田洋之、きらたかし、なかいま強、『うしおととら』の藤田和日郎、『海猿』の小森陽一・佐藤秀峰、『娚の一生』『姉の結婚』の西炯子、『しろくまカフェ』のヒガアロハなど。2018年5月1日にNHN comicoが運営するマンガ・ノベルアプリ「comico」の編集長に就任。2019年4月1日よりNHN comico株式会社代表取締役社長。

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