著者インタビュー

AI開発から見えた「書く」ことの深淵

『コンピュータが小説を書く日』佐藤理史インタビュー

佐藤理史
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佐藤氏はこれまで、アガサ・クリスティやアーウィン・ショー、日本の作家では村上春樹を愛読してきた。その蓄積からつくられた小説の設計図は精巧で、完成した小説はコンピュータが創作の一部を自動化しているようには思えない。

やがては、小説作成の全自動化も夢ではない気もするが、開発の中で佐藤氏が直面したのは「書く」ことの難しさと奥深さであったという。

書くべき内容に沿って既存の情報を焼き直す小説作成ソフトは、何かを新たに生み出しているわけではありません。一方、私はこの本を書くことで、「ああ、自分はこんなことを考えてたんだ」と気付くことがあり、書く前よりも理解が深まった実感があります。人間の「書く」という行為には、コンピュータによる文章生成にはない生産性があるのです。

われわれの研究のゴールは、人間が書くという営みをどのように行っているか、解明すること。しかし、まだそのほとんどが謎に包まれています。

名古屋大学教授・佐藤理史氏 (撮影:内藤サトル)

本書を読むと、コンピュータに対して相反する2つの感情を覚える。人間が思いつかないような傑作を生み出してくれることへの期待と、やがて人類の英知を凌駕(りょうが)し人間の仕事が奪われていく不安だ。しかし、佐藤氏はその不安に怯える必要はないという。

―研究を進めていくと、機械でも処理できる行為と人間しかできない行為がわかってきて、検証を重ねることで、機械的にできる領域は広がります。

そこで大事なのは、その領域を人間が認識すること。機械でもできることは機械に任せ、人間はそれ以外のことに着手する。そうして人間は先に向かっていけばいいんです。

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プロフィール

佐藤理史

1960年、北海道生まれ。88年、京都大学大学院工学研究科博士後期課程電気工学第二専攻研究指導認定退学。2005年より名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻教授。工学博士。専門分野は自然言語処理・人工知能。著書に『アナロジーによる機械翻訳』(共立出版) 、『Rubyで数独 (AIプログラミング入門)』(近代科学社)など。「気まぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」メンバーの一員。

 

 
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