著者インタビュー

AI開発から見えた「書く」ことの深淵

『コンピュータが小説を書く日』佐藤理史インタビュー

佐藤理史
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ところで、人工知能で気になるのが日本の研究レベルだ。この分野で日本は、どれだけの存在感を示しているのだろうか。佐藤氏は次のように分析する。

―アメリカの研究が広がりをもった「面」だとすると、日本は少数の研究者しか存在しない「点」でしょうか。研究者の数も予算もトータルでは勝負になりません。

人工知能の研究が大きな役割を果たすことを企業が理解して投資をし、優秀な若者が「この分野に進めば生活できる」という意識をもてる状況にならないかぎり、差は縮まらないでしょう。

必ずしも現状が明るいわけではないが、佐藤氏は今後も日本語の小説生成に関する研究を続けていく。2016年には、「人狼知能プロジェクト」提供のコンピュータ同士の人狼ゲームの対戦記録(ゲームログ)を文章化するシステムを研究室の学生が実現し、それを基にした作品を星新一賞に応募した。2017年には、さらに新しい手法を導入しているという。

―新しい方法によって全体のシステムやプログラムが複雑になっても、それに比例して作品のクオリティが上がるわけではありません。研究者としてはシステムの能力を向上させながら、みんなが読んで面白いと思う小説をつくりたい。その兼ね合いが難しいところではありますね。

文章を書くことを、「どうやったら一番うまく伝わるかというパズルを解くこと」と佐藤氏は表現する。研究はまだ数ピースを手に入れた段階だ。そのパズルが埋まっていく過程に注目したい。

 

(文責:鈴木工)

※季刊誌「kotoba」27号著者インタビューを一部修正の上、転載しています

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プロフィール

佐藤理史

1960年、北海道生まれ。88年、京都大学大学院工学研究科博士後期課程電気工学第二専攻研究指導認定退学。2005年より名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻教授。工学博士。専門分野は自然言語処理・人工知能。著書に『アナロジーによる機械翻訳』(共立出版) 、『Rubyで数独 (AIプログラミング入門)』(近代科学社)など。「気まぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」メンバーの一員。

 

 
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