バラエティ番組は船にたとえられることがあります。出演者が一緒に乗り込み、どこまで旅を進めることができるのか。天下を取れるのか、それとも途中で沈むのか。番組が終われば乗組員はバラバラになって生きていくわけで、海賊と芸人は案外似た存在なのかもしれません。
だからなのか、「もし自分が『ONE PIECE』の登場人物だったら誰になるんだろう?」と仲間と考えて楽しむことがあります。他人からはほぼ一〇〇%の確率で「濱口は(マスコット的存在の)チョッパーだ」と言われますが、僕自身が憧れるのは、主人公のルフィです。
ルフィの発する言葉も好きなんです。太字で書かれていない、ストーリーを楽しんでる間にさらっと流してしまうようなセリフってありますよね。それを改めて取り出してみると、考えさせられたり、心に残るような言葉が多いし、そして何よりルフィの言葉は僕をワクワクさせてくれます。たとえば、その先にある島が危険なほど、激しく揺れるコンパスを覗きこんで「その真ん中のすげー針が揺れてる島面白そうだな〜〜!!!」とあえて危ない道を選ぼうとしたり、これから活躍するのかどうか分からない敵に向かって、「お前とはまたどっかで会いそうな気がする」と笑いかけたり。そうしたセリフを読んでいると、「この先、どんなことが起きるのだろう?」と気分が高まっていくんです。
『ONE PIECE』は、ワクワクとドキドキが基本にある、冒険のマンガだと僕は思っています。だから以前、『ONE PIECE』の泣けるマンガという側面ばかりが注目された時は、違和感を覚えました。もちろん読んでいて感動するんです。でも『ONE PIECE』が何より素晴らしいのは、自分の中に眠っている少年の心がくすぐられるからであって、感動はその中にあるひとつの要素なのではないでしょうか。『ONE PIECE』はその魅力的な物語と言葉で、いつまでも僕たちの胸を躍らせてほしいと思います。
はまぐち・まさる ● コメディアン
青春と読書「本を読む」
2014年「青春と読書」4月号より