ガザの声を聴け! 第39回

「女子力事件」

清田明宏
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個人的な話で申し訳ないのだが、私の娘はエジプトで生まれ、そこで中学校まで行き、高校はヨルダン、大学はアメリカに行っている。ずっとインターナショナルスクールだ。エジプトでは英国系、ヨルダンではアメリカ系、そして大学は米国東海岸のリベラルな大学だ。家では日本語で話すので、日本語会話は問題ない。ただ、教育環境はずっと英語だ。

 

昨年の夏、アラビア語の勉強を、とエルサレムで1カ月生活をしていた。私も仕事でエルサレムに行くことが多かったので、その際は娘と同じホテルに泊まり、仕事が終わったら夜は一緒に食事をしていた。当時娘は20歳。生意気盛りだ。

 

ある日、日本の有名な国立大学の先生がエルサレムにこられた。世界有数の欧米の大学院で5年間勉強され、博士号を取られた、とても有能で素晴らしい先生だ。彼女の教室の学生さんもたまたまエルサレムにおり、その二人を、私と娘でエルサレムを案内した。旧市街を周り、エルサレム市内のレストランに入った。

 

そこである出来事が起きた。

 

レストランについて注文をし、喉が渇いていたのでビールや水で皆、乾杯。そのとき、私の娘がウエットティッシュを持っており、気を利かして、全員に一枚一枚配った。私は、「へー、結構気が利くものだ」と、内心ちょっと感激していた。

 

大学の先生も、「XX(娘の名前)ちゃん、女子力が高いね!」と優しく言ってくださった。娘はニコニコしていた。

 

食事はとても美味しく、先生のお話もとても面白く、本当に楽しい夕食となった。その後、解散し、娘とホテルに帰った。

 

すると、娘が突然、激怒したのだ。

 

「私がウエットティッシュを配ったのは、みんなが疲れていて、手を拭きたいと思っているのでは、と思ったからで、私が女子だから配ったのではない。なんで女子力なんて言うのだ!」と。

 

もちろん私も娘も、先生が「女子力」という言葉をお褒めの言葉として使って下さったことは理解している。

 

これを読んだ多くの方は日本の文化を知らない娘の単純な勘違いだ、と指摘されるかもしれない。ネットで調べてみると、女子力とは、「女性が自らの生き方を向上させる力、また、女性が自分の存在を示す力」とある。先生の言葉に娘が怒る必要は全くないとも言える。

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 第38回
ガザの声を聴け!

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

プロフィール

清田明宏
1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。
 
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