著者インタビュー

開発から見えた「書く」ことの深淵

『コンピュータが小説を書く日』佐藤理史インタビュー

佐藤理史
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「人間以外(人工知能等)の応募作品も受付けます」。そう謳(うた)う文学賞・日経星新一賞の1次審査を、コンピューターが書いた小説が通過した——。

2016年春、ひとつのニュースが驚きをもって報じられた。2つのチームが応募した計4作品のうち、どの作品が1次審査を通過したのかは明らかにされていないが、そのうちのひとつが、コンピュータによるショートショートの自動創作を目指すプロジェクト「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」のメンバーである名古屋大学の佐藤理史(さとし)氏のチーム。2013年の研究開始から2年半の歳月をかけた研究の成果だった。

報せに触れて、多くの人が抱いたイメージがある。コンピュータが膨大な量の小説を学習し、ゼロから小説をつくり出す光景だ。

―そのイメージは誤解です。

と応募作品をつくるプログラムを開発した、本書『コンピュータが小説を書く日』(日本経済新聞出版者)の著者・佐藤理史氏は語る。

―「小説を書く」ことは、「話をつくる作業」と「書く作業」に分けられ、われわれ名古屋大学のチームが研究したのは後者に関してです。日本語の文章を機械的につくり出すには、どのようなデータとアルゴリズム(手順)が必要なのか明らかにしたかったわけですね。しかし、そこで生み出されたものは単なるプログラムやアプリであって、「知能」ではありません。コンピュータが自由意志で小説を書くことはないんです。

しかし、日本人には「万物に魂が宿る」という考え方がどこか根付いており、ものを擬人化するのに抵抗が少ないのだろう。

―そのため、「知性のあるコンピュータが人格をもって小説を書いた」と素朴にとらえる方が多かったのかもしれません。

佐藤氏はこのように推察する。

応募作品をつくるまでの課程とその後の顚末をまとめた本書では、小説を機械的につくるための試行錯誤が綴られている。

『コンピュータが小説を書く日 AI作家に「賞」は取れるか』 佐藤理史著、日本経済新聞出版 (撮影:伊豆倉守一)

最初は既存小説の部分を組み合わせて新しい小説をつくろうとしたが、失敗。たどりついたのは、人間が用意しておいた文章表現のパターンと小説の大まかな構造を、コンピュータが組み合わせる手法だった。たとえるならば、レゴブロックと「ものが安定して立つには4本の足が必要」といった基本的なルールを与え、コンピュータに実際の組み立て作業を行わせるイメージだ。

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プロフィール

佐藤理史

1960年、北海道生まれ。88年、京都大学大学院工学研究科博士後期課程電気工学第二専攻研究指導認定退学。2005年より名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻教授。工学博士。専門分野は自然言語処理・人工知能。著書に『アナロジーによる機械翻訳』(共立出版) 、『Rubyで数独 (AIプログラミング入門)』(近代科学社)など。「気まぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」メンバーの一員。

 

 
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