なぜ極右の躍進は止まらないのか フランスから考える 第7回

なぜ女性も極右を支持するのか(上)

森野咲

フランスの大学院で哲学を学ぶ森野咲が、現地での最新の研究や報道の成果をもとに、極右の成長、定着の背景やメカニズムを明らかにする連載の第7回。
近年のヨーロッパ極右政党については、女性の政治家の活動も目立つと同時に、女性の支持者も増加している。極右は、男性中心的で女性を“従属的な存在”として扱うにもかかわらず、このような現象が生じるのはなぜなのか。2回にわたり検証する。

 フランス極右の近年の躍進を考える上で避けられないのが、女性による国民連合支持の増加である。一般的に、極右の支持層は男性に偏ると考えられがちだが、驚くべきことに、近年の国民連合の支持層に男女差はほとんど見られない。さらに、マリーヌ・ルペン、イタリア首相のジョルジャ・メローニ、ドイツAfD(ドイツのための選択肢)共同党首のアリス・ワイデルのように、女性政治家が極右勢力の顔となり、リーダーシップを担うことも、いまや珍しい光景ではない。

2015年1月20日、ローマのテレビ番組で共演するジョルジャ・メローニ(左)とマリーヌ・ルペン(右)。写真:Italy Photo Press/アフロ
2015年1月20日、ローマのテレビ番組で共演するジョルジャ・メローニ(左)とマリーヌ・ルペン(右)。写真:Italy Photo Press/アフロ

 こうした極右の「女性化」とも言える傾向は日本でも観測されている。2025年夏の参院選で躍進した参政党は、神谷宗幣代表による「高齢の女性は子どもが産めない」などの発言が批判を浴びた一方で、女性候補者の割合は候補者の半数近くに達し、全政党のなかでも高い比率であった。さらに、選択的夫婦別姓反対派で、自民党内でも最右翼とみなされてきた高市早苗が、2025年10月に憲政史上初の女性首相に選出された。このように、保守的な性道徳や家族観を掲げる政治勢力が女性の支持を集め、さらには女性政治家自身がその中心でリーダーシップを発揮するという、一見すると逆説的な状況が世界各地で生じているのである。

 極右政党にとって、女性の動員は単なるイメージ戦略にとどまらない。それは、ナショナリズムを広め、過激な主張を「普通のもの」として見せ、政治的に正当化するうえで重要な役割を果たしている。女性は、極右思想の暴力性や過激さを和らげるためのただの飾りではない。むしろ、その運動を内部から支える不可欠な存在なのである。しかし同時に、その存在は、極右イデオロギーが抱える矛盾を浮かび上がらせる。極右思想は、伝統的な性別役割や、男性中心的で女性を従属的な立場に置く秩序を重視する。それにもかかわらず、その思想を支持し、広める役割を担っているのは、他でもない女性自身なのだ。

 極右運動に参加する女性たちは、ミソジニー(女性蔑視)的な秩序のなかで「弱く、守られるべき存在」とされる一方で、その秩序を能動的に推進する政治的主体でもある。極右の女性たちは、従順さと行動力、脆弱さと大胆さという、矛盾する性格を併せ持っている。では、なぜ一部の女性は、自らの権利を制限しかねない政治運動の「大使」として振る舞うのか。そして、なぜそのような戦略は実際に機能し、女性票の獲得へ繋がっているのだろうか。

極右ジェンダー・ギャップ

 女性は男性に比べて極右政党を支持する傾向が低いという見方は、かつて広く共有されていた。1980〜90年代以降のフランスでは、極右への投票行動において明確な男女差が見られ、男性は女性の約二倍の割合で国民戦線(現・国民連合)に投票していた。女性が男性に比べて国民戦線を支持しにくいというこの傾向は、フランス型の「極右ジェンダー・ギャップ」として、重要な特徴とされてきた。このような差が生じた要因としては、主に以下の四点が指摘されている。

 第一に、労働市場における性別分業のため、移民労働者との競合が男性により集中しやすかったことが挙げられる。グローバル化や産業構造の変化、移民労働者との競争によって打撃を受けやすかったのは、サービス部門に多く従事する女性よりも、工業部門やブルーカラー職に多く従事する男性であった。そのため、男性のほうが反移民や反グローバル化を掲げる政治的訴えに引きつけられやすかったと考えられる。

 第二に、キリスト教的慈愛にもとづく宗教的倫理が、女性により強く作用してきたということがある。フランスでは、カトリック教会が極右の反平等主義や反普遍主義を批判してきた。そのため、とりわけ宗教実践の度合いが高い高齢女性において、キリスト教的倫理は極右支持を抑制する要因として働いたとされる。

 第三に、ジェンダーロールにもとづく社会化が、女性に過激な政治的選択肢を避けさせる方向に作用したことが挙げられる。女性はしばしば、規範への服従、協調性、攻撃性の抑制を重視する形で社会化される。そのため、急進右派に結びつけられてきた過激主義や暴力性、既存の政治規範から逸脱するアウトサイダー的性格は、女性有権者に忌避感を抱かせてきた。

 最後に、第三の点とは矛盾するようだが、フェミニズムの浸透が、とくに若い女性の価値観を変化させ、保守的なジェンダー観を掲げる極右から距離を取らせたことも重要である。フェミニズムが提示する解放的な価値観は、極右がしばしば重視する伝統的な家族観や性道徳観とは両立しにくい。そのため、女性の権利や自律性を重視する層にとって、極右は支持しにくい政治的選択肢として認識されてきたのである。 以上のように、女性が極右を支持しにくいとされてきた背景には、経済的利害、宗教的価値観、ジェンダー規範、フェミニズム意識が複合的に作用していた。こうした説明はいずれも、極右が女性にとって距離を置きやすい政治勢力として認識されてきたことを示している。では、そもそも極右政党の側は、女性をどのように位置づけてきたのだろうか。

極右と性差別

 フランス極右は伝統的な性別役割や家族主義を重視し、女性を自律的な個人というよりも、国家や民族の再生産を担う存在として位置づけてきた。かつて、ジャン=マリー・ルペンが「女性が自分の身体は自分のものだと考えることは馬鹿げており、身体は自然と国家に属している」と述べたように、極右の世界観において女性の身体はしばしば国家的・共同体的な目的に従属させられる。

 こうした価値観を象徴してきたのが、中絶への反対である。実際、中絶反対は戦後フランス極右における要石の一つであった。1975年に中絶が合法化されてから長い時間が経過したにもかかわらず、2024年にフランスで中絶の自由を憲法に明記するか否かが議会で問われた際、国民連合の議員のおよそ半数は反対または棄権に回った。

 さらに、国民連合のジェンダー平等への抵抗は、中絶をめぐる問題に限らない。同党は2021年の欧州議会において、セクシュアル・ハラスメント対策に関する決議に反対したほか、公務員制度における女性の上級職・管理職へのアクセスを強化する法律にも反対した。また、ジェンダー平等、性教育、避妊、中絶へのアクセス、女性の権利に関わる団体への予算削減も提案してきた。国民連合は、フェミニズム的な争点に対して一貫して消極的、あるいは敵対的な立場を維持しているのである。

 しかし、ここで問題となるのは、こうした性差別的な立場が維持されているにもかかわらず、近年では女性有権者も国民連合に投票するようになっているということである。極右が女性の権利や主体性と緊張関係にある政治的立場をとり続けているにもかかわらず、かつて存在した極右ジェンダー・ギャップは縮小し続け、近年ではほとんど消失しつつある。この逆説的な状況をどのように理解すればよいのだろうか。

 以下のグラフを見てみよう。これは、過去40年にわたる欧州議会選挙および国民議会選挙における、国民戦線/国民連合の男女別得票率を示したものである。国民連合の前身である国民戦線の時代には、同党に投票する有権者の男女比は、おおむね2対1で安定していた。しかし、マリーヌ・ルペンが党首に就任した2011年頃からこのジェンダー・ギャップは縮小し、近年の選挙ではほとんど見られなくなっている。すなわち、かつて見られた「女性は極右に投票しにくい」という傾向は、もはや現在の女性による国民連合支持という現象を十分に説明できなくなっているのである。

ヨーロッパ議会選挙、大統領選挙の男女別得票率をもとに著者作成。
ヨーロッパ議会選挙、大統領選挙の男女別得票率をもとに著者作成。

どんな女性が極右を支持しているのか

 国民連合に投票する女性には、どのような傾向があるのだろうか。統計によれば、国民連合への支持は、非正規雇用、低学歴、低〜中所得層の女性において相対的に強い。ただし、最も貧しい層はそもそも投票に行かないことが多いため、国民連合が貧困層を大規模に政治参加へと動員しているというよりも、あくまで投票に来た低所得層のなかで比較的強い支持を得ている、と理解するべきである。

 しかしこうした傾向は、極右ジェンダー・ギャップが消失しつつある理由の一端を示しているのではないか。2008年以降の経済危機と雇用の不安定化は、女性が多く従事してきたサービス部門の労働に内在していた低賃金性、不安定性、社会的評価の低さといった問題をいっそう強めた。これにより、従来は男性中心の工業労働者層の地位低下と結びつけて語られてきた社会的不満や閉鎖的なアイデンティティ形成を促す条件は、女性のサービス業労働者のあいだにも共有されやすいものになったのである。

 国民連合の票は、最も貧しい人々や、社会から完全に排除された人々の票というよりも、上からは軽視され、下からは社会的扶助を受ける人々に追い越されていると感じるような、中間的で不安定な層の「三角形意識」に根を持つ(第2回の記事を参照)。つまりこの層には、「エリート」への反発と同時に、生活保護や社会保障に依存していると見なされる人々への反感も存在する。そのため、国民連合の反エリート的かつ反福祉依存的な語りは、「尊厳」や「まじめに働く者の不満」と結びつくことで、一定の説得力を持つのである。 とりわけ、保育や教育といった公共サービスの劣化を日常的に感じる場面では、「国民優先」による保護を求める感情は強まりやすい。ここで問題になっているのは、単なる個人としての不満ではなく、家族や生活の維持に関わる不安である。18〜29歳でルペンへの投票を申告した女性に、同年代の男性や全体平均と比べて既婚・同棲の割合が高いことは示唆的である。そこからは、カップル内で投票選択が共有される傾向、さらには世帯単位で政治的選択が形成される傾向がうかがえる。したがって、女性を極右投票へと向かわせている要因の一つは、単なる反移民感情というよりも、家族生活の維持を国家的保護によって支えようとする「社会的再生産保護主義」の訴求力なのではないか。

社会的再生産保護主義とは何か

「社会的再生産保護主義」とは、生活の維持や家族の再生産を支える資源を、「国民」や「土着の人々」に優先的に配分すべきだとする排外主義的な政治態度である。ここで問題となるのは、雇用や賃金をめぐる競争だけではない。学校、住宅、福祉、家族手当、公共サービスといった生活基盤へのアクセスもまた、移民や人種化された集団との競争として捉えられる。つまり、社会的再生産保護主義は、生活を支える制度的資源を「われわれ」(しばしば白人、国民、土着的な労働者層ないし中間層として想定される集団) のものとして囲い込み、その優先的な保護を求める論理なのである。

 この点で、社会的再生産保護主義は福祉排外主義とも重なり合うが、それに尽きるものではない。福祉排外主義が主として福祉給付や社会保障の配分をめぐる排除の論理を指すのに対し、社会的再生産保護主義は、より広い生活基盤の領域を対象とする。そこには、学校、住宅、家族形成、子育て、地域の公共サービス、さらには世代間上昇移動の可能性までもが含まれる。したがって、この概念が問題にするのは、単に「誰が福祉を受け取るべきか」という問いではない。むしろ、「誰の生活が、誰の家族の未来が、公的に支えられるべきなのか」をめぐる排外主義的な選別の論理なのである。

 社会的再生産保護主義は、「国民優先」を掲げる極右の福祉排外主義から、「大置換」論のような陰謀論に至るまで、広範な極右的想像力と共鳴する。移民やマイノリティが公共資源を「奪っている」という語りと、彼らが将来的に「われわれ」に取って代わるという不安は、いずれも社会的再生産を支える制度や資源の配分を、「パイの奪い合い」として捉えるゼロサム的な想像力に基づいている。

 さらに重要なのは、こうした生活不安がジェンダー化されたかたちで経験されるという点である。性別役割分業のもとでは、家族内外におけるケア、子育て、教育、生活の維持といった社会的再生産の仕事は、依然として女性に大きく担われている。そのため、新自由主義的な経済秩序のもとで拡大する学校、家族手当、福祉、住宅、地域の公共サービスをめぐる不安は、女性にとってより切実なものとして現れやすい。このことは、女性の極右支持を理解するうえで重要な手がかりとなる。 つまり、女性たちの国民連合支持を、観念的なナショナリズムや外国人嫌悪のみに還元するべきではない。社会的再生産保護主義は、家族生活の維持、子どもの教育、住宅、福祉、公共サービスへのアクセスをめぐる不安を、移民やマイノリティとの競争の問題として再構成する。そしてそれが「国民優先」という排外主義的な保護の言説と結びつけられることで、国民連合への支持を後押ししているのである。

マリーヌ・ルペンは女性の味方?

 女性の国民連合支持が増えた背景には、マリーヌ・ルペンが党首就任後に進めた「正常化」戦略も関係している(前回の記事を参照)。とりわけ、ルペン自身の女性性がもたらす比較的穏健なイメージは、極右への投票に伴っていた心理的ハードルを下げ、女性有権者にとって国民連合を以前ほど忌避すべき対象ではないものとして見せる効果を持った。

 マリーヌ・ルペンは党首就任以降、大衆的な意見を取り入れながら、党の言葉遣いや争点設定を調整した。これにより、女性有権者に忌避されやすい論点は前面に出されにくくなった。2017年大統領選では、フランスの大手世論調査会社Ifop出身で、世論分析に通じたダミアン・フィリポが陣営に加わり、キャンペーン文書や論拠作成を担っていたことからも、ルペン陣営が世論調査や世論分析を重視していたことがうかがえる。その一例が、中絶をめぐる立場の変化だ。国民戦線/国民連合は長年、反中絶的な立場を掲げており、マリーヌ・ルペン自身も2012年には「安易な中絶」を批判する表現を用いていた。しかしその後、こうした論点は少なくとも表向けには次第に抑制されるようになる。

 さらに、2017年の大統領選の時期を境に、ルペンは「母」であり「現代的な女性」であるという自己演出を強め、「女性の大義の擁護者」としてふるまうようになった。この変化の背景として、同時期のフランスで起きていた二つの動きに注目する必要がある。第一に、同性婚反対運動を契機とした保守女性運動の再活性化と再編である。第二に、「女性の安全」を移民やイスラームへの排除と結びつける、フェモナショナリズム的言説の高まりである。

(後編に続く)

 第6回
なぜ極右の躍進は止まらないのか フランスから考える

昨今、日本では排外主義や自国第一主義を掲げる政党が選挙で議席を伸ばしている。ヨーロッパをはじめとする世界各地での極右政党躍進の流れが、いよいよ到来したとの見方もある。では、極右の「先進地」とも呼べるヨーロッパでは、極右はどのように勢力を拡大してきたのだろうか? フランスの大学院で哲学を学ぶ森野咲が、現地での最新の研究や報道の成果をもとに、極右の成長、定着の背景やメカニズムを明らかにする。

プロフィール

森野咲

(もりの さき)

1996年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、大杉栄や石川三四郎に憧れて渡仏。パリ郊外サン=ドニにあるパリ第8大学哲学科の修士課程2年に在籍中。専門はフランス現代哲学。現在、『ふぇみん』に「極右とフェミニズムの不幸な結婚」を連載中のほか、自身のnoteで「極右の傾向と対策」と題したマガジンを発表している。

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なぜ女性も極右を支持するのか(上)

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