宇都宮直子 スケートを語る 第16回

唯一無二

宇都宮直子
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 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっている。

 緊急事態宣言が、11都府県に再発令されている。もちろん、それ以外の地域も注意が必要だ。不要不急の外出を控えなければならない。不自由でも、そうすべきだ。

 誰がどこで、誰とステーキを食べに行こうと、ふぐを食べに行こうと関係ない。詭弁につきあって、不利益を被るのは弱者の方である。不真面目に倣ってはいられない。

 こうした類いの冒頭を、私は繰り返し書いている。

 フィギュアスケートのエッセイにそぐわないかもしれないが、終息するまで、ときどきに綴っていきたいと思う。

 世界中でとんでもない数の患者が、医療従事者が闘っている。闘いには、命が掛かっている。コロナ禍に慣れてはいけない。絶対に、だ。

 

 ところで、状況はノンフィクションを生業とする書き手にも厳しい。筆者も大きな影響を受けている。取材が組めず、流れてしまった企画が何本もある。

 会いたい人にも、まだ会えていない。会えるようになったら会いたい人の中に、都築章一郎コーチがいる。

 師は今年1月に83歳になられた。矍鑠(かくしゃく)とされているが、今は何より自愛に努めていただきたいと願う。

 その上で、都築にはいくつか訊ねたいことがある。

 昨年12月に長野で行われた、全日本選手権での羽生結弦について。都築が口にする「感動以上のものを覚えた」について、などをである。

 それが許される時期が来たら、真っ先に都築を訪ねたい。

 全日本選手権で、羽生は言いようもなく美しかった。

 昨年12月27日の信濃毎日新聞は、一面にカラーで羽生結弦の写真を掲載した。写真にかぶせて赤い文字で、大きくこう書いた。

「羽生 別格」

 白抜きで、試合についても書いた。抜粋して引用する。

「フィギュアスケート男子で冬季五輪2連覇の羽生結弦(26)が、長野市ビッグハットで行われた全日本選手権で合計319.36点を出し、5年ぶりに日本一に返り咲いた。

 新型コロナウイルス禍で今季初戦となった羽生はフリーは大河ドラマ『天と地と』の音楽を使った新たな演目を披露。3種類の4回転ジャンプを計4度決める圧巻の内容で前日のショートプログラムに続いて1位となった」

 私はこれらについて、話したい。そのための機会を、ゆっくり待っている。

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宇都宮直子 スケートを語る

ノンフィクション作家、エッセイストの宇都宮直子が、フィギュアスケートにまつわる様々な問題を取材する。

関連書籍

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プロフィール

宇都宮直子

ノンフィクション作家、エッセイスト。医療、人物、教育、スポーツ、ペットと人間の関わりなど、幅広いジャンルで活動。フィギュアスケートの取材・執筆は20年以上におよび、スポーツ誌、文芸誌などでルポルタージュ、エッセイを発表している。著書に『人間らしい死を迎えるために』『ペットと日本人』『別れの何が悲しいのですかと、三國連太郎は言った』『羽生結弦が生まれるまで 日本男子フィギュアスケート挑戦の歴史』『スケートは人生だ!』ほか多数。2020年1月に『羽生結弦を生んだ男 都築章一郎の道程』を、また4月には『三國連太郎、彷徨う魂へ』が刊行されている。

 

 
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