ガザの声を聴け! 第42回

2017年4月「家の一つ一つの石には歴史があるのだ」

清田明宏
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Clip to Evernote

二人はアインタルキャンプから家族で避難してきた。娘の子供達は皆海外に避難したそうだ。国内に残ったのは父親とその娘だけ。高齢家族だ。話を聞くと、とても丁寧に色々話してくださる。朗らかで、温かい二人だ。

 

そのうち、近くの部屋の住人(50代後半の男性)が話に加わった。彼も同じ難民キャンプから避難してきた。当時からの知り合いだそうだ。

 

父娘は避難してから一度もキャンプに帰っていないが、この知り合いの男性は一度帰ったらしく、キャンプの様子を話してくれた。そして、その時携帯で撮ったという写真を見せてくれた。激戦で家々が崩壊している。もともと石造りの家が多いが、跡形もなく崩壊している家もあった。

 

そして、その男性がこの父娘の家の写真を見せてくれた。壊れている。跡形もない。家を造った石が散乱している。

 

それを一緒に見ながら、娘さんがこう言った。

 

「皆で一生懸命仕事をして、この家を建てたのだ。家の一つ一つの石には歴史があるのだ」

 

 

話には悲しい続きがある。この父親は、数ヶ月後に症状が悪化して亡くなられたそうだ。アレッポを一緒に訪問した同僚から連絡があった。最後に握手した時の父親の手のぬくもりが忘れられない。

1 2 3 4
 第41回
第43回 
ガザの声を聴け!

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

プロフィール

清田明宏
1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。
 
集英社新書公式Twitter 集英社新書Youtube公式チャンネル

プラスをSNSでも

Twitter, Youtube

2017年4月「家の一つ一つの石には歴史があるのだ」

;