「それから」の大阪 第2回

万博開催予定地の「夢洲」をあちこちから眺める

スズキナオ
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8月25日、2025年に開催が予定されている大阪万博(日本国際博覧会)のロゴマークが公開された。万博のテーマである「いのちの輝き」を表現したもので、細胞のイメージだという赤い円の中に5つの目玉のような形が配置され、左右非対称でどこか生物めいたデザインだ。インパクトのあるデザインゆえに世間でも賛否両論が巻き起こったが、吉村洋文大阪府知事は「個性的なロゴマーク」と称え、松井一郎大阪市長は「これだけでも万博の注目度は上がった」と発言した。

私はスマートフォンで開いたニュースでこのロゴマークを最初に見た時、「えっ!本当にこれ?」と、びっくりして2度見した。確かに印象には残りやすいかもしれないが、万博のロゴとしてふさわしいものなのかわからなかった。当然だが、今後はこのマークをあしらった様々なグッズやポスターが作られ、大阪の町のあちこちに姿を現すのだろう。なんとも違和感のある風景になりそうだな……まあ、そのうち慣れてしまうんだろうけど。

Twitterを見ると多くの人がこのロゴマークについて意見を言い、パロディ画像がたくさんリツイートされていたりして、とにかく「大阪万博というものが2025年に開催されるらしい」ということがこれまで以上の現実感をもって受け入れられた印象はあった。

大阪万博は大阪市此花区にある「夢洲」という埋め立て地を会場として開催される予定だ。「夢洲」と書いて「ゆめしま」と読む。「夢洲」は「舞洲(まいしま)」と「咲洲(さきしま)」という人工島と距離的に近く、トンネルと橋でつながっている。「舞洲」、「夢洲」、「咲洲」と3つ並べると俗にいうキラキラネームのようだが、この名は1991年に一般公募によりつけられたもの。「洲」の字を「しま」と読む例は一般的には無いらしく、難読地名の部類だろう。私も大阪に越してきた当初はまさか「しま」と読むとは思わず、「まいす」とか「ゆめす」と言ってしまっていた。大阪市西部の湾岸にあり、「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)」や、「海遊館」のある天保山のさらに西に位置している。

3つの人工島とも、1988年に大阪市が打ち出した「テクノポート大阪」という都市構想の舞台として夢見られた場所で、巨額の予算がつぎ込まれて大型施設が建ち、インフラも整備されつつあったが、バブル崩壊のあおりもあって計画がとん挫。思い描いたように発展することはなく、大阪府民に「負の遺産」として認知されるようになった。その後も、舞洲を開催予定地に2008年の五輪招致を目指すも失敗したり、咲洲にあった「大阪ワールドトレードセンタービルディング」が2010年に大阪府に買収されて大阪府の咲洲庁舎として利用されることになったり、なんとかこの3島を有効活用しようというのがここ25年ほどの大阪の課題だった。

大阪万博が開催されてそこに人が集まり、会場の夢洲はもちろん、隣接する咲洲、舞洲も含めて一気に大阪の西側が盛り上がる!というのが理想のビジョンなのだろうけど、そんなにうまくいくものなんだろうか。個人的には一気に景色が変わって明るい未来がやってくるようには思えないのだが、とりあえず2020年現在の3島の様子を書き留めておきたい。

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 第1回
「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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