「それから」の大阪 第2回

万博開催予定地の「夢洲」をあちこちから眺める

スズキナオ

いよいよ、夢洲上陸!

さて、陸から海から空からと夢洲を眺めてきた私の次の目標といえば、実際に夢洲に上陸してみることである。上空からの眺めでわかった通り、現在はコンテナとクレーン以外これといったものがない夢洲だが、島内に一か所だけバスの停留所があり、特別な手続きなどなく上陸することができるのだ。咲洲にある大阪メトロ・コスモスクエア駅の駅前から、「ホテルロッジ舞洲」行きの北港観光バスに乗車すればいい。

夢洲へ向かうバスは30分に1本程度の頻度で走っている(2020年8月撮影)

バスは咲洲から「夢洲トンネル」という海底トンネルをくぐってすぐに夢洲へ上陸するのだが、そのまま一旦夢洲を通り過ぎて舞洲へ向かい、舞洲を一周して再び夢洲へ戻るという不思議なルートを辿る。夢洲のバス停で下車できるのは舞洲をグルッと回った後ということになるのだが、舞洲観光がセットになったと思えばお得に感じられなくもない。舞洲のランドマークで、オーストリアの建築家・フンデルトヴァッサーが設計した「舞洲清掃工場」の色鮮やかな建物も車窓から間近に見える。

バスの車窓から見る舞洲の清掃工場(2020年8月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスは舞洲と夢洲を結ぶ真っ白な橋「夢舞大橋」を渡り、ようやく「夢洲コンテナターミナル前」という停留所に到着した。その名の通り、船から降ろされたコンテナがトラックに乗せられて運ばれていく物流施設の目の前で、広大な敷地にうず高く積まれたコンテナを運び出すトラックが慌ただしく行き交っている。

夢洲コンテナターミナル敷地内のコンテナとトラック(2020年8月撮影)

 

そもそも一般の歩行者など想定されていない場所だから信号も横断歩道もない。バス停で降りても、途切れずに次々と走ってくるトラックの間をなんとかかいくぐるようにして広い道路を横断しなければ移動ができないのである。危険を感じつつ西側へ歩いていくと、島内で唯一、一般客でも利用できるスポット「セブンイレブン大阪夢洲店」がある。ちなみに、このコンビニの前にだけは信号と横断歩道があった。

駐車場のトラックの先に島内唯一のコンビニが(2020年8月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大型トラックが何台も停車している駐車場を抜けて入店してみたところ、当たり前だが中は普通のコンビニである。利用客のほとんどはトラック運転手らしく、店内の手洗い場で歯磨きをしている人の姿があった。イートインがあり、ここで食事をしていく人も多いのだろう。私もインスタントラーメンを食べていくことにした。もちろんいつもと同じ味だが、何もなかった頃の夢洲で食事をしたということがいつか思い出話になるかもしれない。

セブンイレブン大阪夢洲店の前で(2020年8月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

発泡酒を買って飲みながら外を歩く。店の前を掃除している店員さんに話を聞くと、「この辺には歩いて行けるところはあまりないですよ」とのこと。店員さんも自家用車や送迎車でここにやってくるそうだ。日差しを遮るものの一切ない広漠とした風景をうろうろと歩いてみる。歩ける範囲が限られているとはいえ、なんせ敷地は広いので結構疲れる。草が伸び放題になった広場の脇にはエナジードリンクの空き缶や栄養ドリンクの空き瓶が多数捨てられており、運転手たちが疲労をいやしつつここで時間を過ごしたことが想像される。夢舞大橋付近から舞洲方面を眺め、島の南部を歩いてバス停へ戻った。

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「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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