「それから」の大阪 第3回

大阪の異界「石切さん」は“西の巣鴨”か

スズキナオ
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Go To トラベルで「大阪から大阪へ」旅行してみる

2020年7月22日、観光庁の主導によって「Go To トラベルキャンペーン」がスタートした。新型コロナウイルスの影響で壊滅的な打撃を受けた旅行業界や観光地、交通機関への消費を喚起することを目的とした施策で、キャンペーン期間内の国内旅行の宿泊費・旅行費が大幅に割引されるというもの。割引額は国が補てんし、政府の発表によれば1兆円以上の予算が投じられるという。一時期は減少傾向にあった国内の感染者数が再びじわじわ増え始め、収束の兆しの見えない中でのスタートということもあり、「時期尚早ではないか」と批判の声も多かった。人の行き来を推進することで感染が拡大してしまうのではという懸念もあり、旅行客を受け入れる側になるであろう地方自治体からも反対意見が目立った。また、その施策によって支援されるはずの業者の側にしても、参加申請の手続きが予想以上に煩雑だったり、客の対応に追われる現場が混乱したりとスムーズにはいかず、開始からドタバタ続きのキャンペーンとなった印象である。

観光業界へ向けてお金の流れを作り出そうとすること自体は理解できるにしても、このやり方が最善だったのだろうかと個人的には疑問を感じるところだった。とはいえ、キャンペーンがスタートしてしまった以上、それをある程度の人が利用し、売り上げが大きく落ち込んだ業界が少しでも活性化することを願うしかない。キャンペーンの利用者が当初の見込みに比べて伸び悩んでいるというニュースをテレビで何度も目にしていたこともあり、私は徐々に「どんなものか実際に利用してみようか」と思うようになってきた。ただ、私の住む大阪府は東京都に次いで連日多くの感染者が報告されている。他県へ遠出するのはあまり気が進まず、大阪府内で、これまで行ったことのない地域に宿泊してみようかと考えた。

しかし、いざ利用しようと思ってキャンペーン概要について調べてみても難しくてよくわからない。私の理解力不足のせいなのかもしれないが、単純に旅行費用が割り引かれるというだけではなく、その一部はポイントとして還元されるとか、細かな利用条件があるとか、どうにもすんなりと理解できないのだ。「こんな風に利用するとお得です!」と解説しているブログ等もたくさん見つかったが、しまいには比較検討すること自体が面倒になり、結局、よく考えずに大手旅行予約サイトを通じて宿を探してみることにした。

キャンペーンの対象となる宿泊施設の中から、東大阪市の石切駅近くにあるホテルを予約した。大阪の東側、大阪府と奈良県との県境にそびえる生駒山の山麓に位置する石切には「石切劔箭神社(いしきりつるぎやじんじゃ)」という神社があり、その参道に商店が立ち並んでいて趣があるというので、前々から一度訪れてみたいと思っていたのだ。

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 第2回
「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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大阪の異界「石切さん」は“西の巣鴨”か

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