「それから」の大阪 第5回

コロナ禍の道頓堀界隈を歩く

スズキナオ

11月以降、全国的に新型コロナウイルスの感染者増加に歯止めがかからず、特に重症とされる患者数が急増している。重症患者用の病床の使用率は大阪が全国トップで、府内全体で用意された病床の63%がすでに使用されている状況だ(12月3日現在)。この状況を受け、大阪府は12月3日に感染拡大対策用の独自ガイドラインである「大阪モデル」に照らし合わせて最大の警戒レベルである「赤信号」を点灯させることを発表。12月4日から15日までの期間、不要不急の外出を控えるよう呼びかけた。

また、11月27日からは“キタ”エリアのある大阪市北区、“ミナミ”エリアのある大阪市中央区で酒類を提供する飲食店等に対して営業時間を21時までとする、いわゆる「時短営業」が要請されていたのだが、これも当初に定められた期限が延長されることが決まった。

これまでテレビのニュース番組やワイドショーでは、吉村洋文知事の行動力を評価するような報道が多く見受けられた印象だったが、12月以降は「どうして大阪はこうなってしまったのか?」と、大阪の対応を失策として扱うような報道が増えてきた。こういった事態になる直前の11月まで住民投票に総力をあげていた大阪府・大阪市の対応の問題点が批判されるのは仕方ないことだとして、最前線でそのあおりを食っているのはその大阪で暮らす人々だろう。特に飲食店は度重なる状況の変化に翻弄されてかなり疲弊しているのではないだろうか。

こんなに地面が広く見えたのは初めてだ

外出自粛が呼びかけられる数日前の平日の午後、久々にミナミの町を歩いてみることにした。道頓堀近辺はかなり閑散としている。10月末のハロウィンの際はすごい人出だったというから、取材時が平日の昼間であるということも影響しているのだろうが、それにしても静かだ。

人影もまばらな道頓堀通りの様子(2020年12月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大阪随一の記念撮影スポットとして有名なグリコ看板からもほど近い道頓堀通りは、以前であれば真っ直ぐに歩くのが困難なほどに賑わっている通りだった。人気のたこ焼き店が立ち並び、かに道楽の本店があり、ド派手な龍の立体看板が目印の金龍ラーメンがあり、国内外からの観光客が多く訪れ、いつも活気に溢れていた。

東京で育った私が高校の修学旅行で歩いたのもこの通りだったし、以来、大阪に観光に来るたびにとりあえずここへやって来ては、その喧噪に「おお、これが大阪か!」と思わされたものだ。

どこも繁盛して並ばずには買えなかったたこ焼き店の前に、しかし今、行列はない。イートインスペースのある店舗にも客の姿はほとんどない様子だった。

 

道頓堀商店会が掲げる「がんばれミナミ がんばれ大阪!!」ののぼり(2020年12月撮影)

シャッターをおろしている店舗も多く、とりわけ目立ったのは大型ドラッグストアチェーンの閉店だ。つい昨年までは主に中国からの観光客によって店頭の商品が大量に売れ、「爆買い」と称されるほどだった通り沿いのドラッグストアが撤退を余儀なくされているところに、新型コロナウイルスの影響が生々しく現れている。取材に同行してくれた大阪生まれ大阪育ちの知人いわく、道頓堀周辺は昔から観光客向けの町という印象で、地元の人である知人が歩くことはあまりなかったそうだが、とにかくいつも賑わっていたエリアゆえに「こんなに地面が広く見えたのは初めてだ」と驚いたようだった。

串カツ、たこ焼き、お好み焼き等々、いかにも大阪らしいメニューを看板に掲げた飲食店のひしめく千日前商店街も、以前の喧騒が嘘のようである。

 

 

こんなに静かな千日前商店街は初めて見た(2020年12月撮影)

商店街沿いには創業70年を超える老舗喫茶「アメリカン」がある(2020年12月)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千日前通りの大きな道路を渡って千日前難波センター街商店街までやってきた。大型家電量販店・ビックカメラの店舗や敷地の大きなパチンコ店と小さな個人商店とが入り混じるように存在するエリアだ。織田作之助が愛したことでも知られるカレーの自由軒本店があるのもこの商店街。

 

老舗もちらほら残る千日前難波センター街商店街(2020年12月撮影)

大阪のご当地グルメとしても知名度の高い自由軒本店(2020年12月)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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