「それから」の大阪 第13回

朝6時から365日営業し続ける銭湯「ユートピア白玉温泉」の今

スズキナオ

エステもサウナも露天もプールもある「町の銭湯」

東京から大阪へ引っ越してきて驚いたことは色々とあるが、「やたらとサービス精神旺盛な銭湯が多い」というのもその一つだ。

浴場の中に薬草風呂、電気風呂、ジャグジー風呂など様々な浴槽があり、露天風呂がある銭湯も少なくない。また、ロビーで飲み物や食べ物を販売しているところも多く、生ビールサーバーが設置されている場合もある。色々なお風呂を入り比べることができ、風呂上がりには冷たい飲み物でも飲みながらゆったり過ごすことができるわけである。いわゆるスーパー銭湯や健康ランドであれば、敷地が広くて湯舟もたくさんあり、サービスも行き届いていることが多いが、それに負けないぐらいのものが町の銭湯にあるのだ。入浴料金は大人450円である(2021年10月1日に入浴料が改定され、大人490円に値上がりすることが決定しているが)。

もちろん、どこでもがそうだというわけではなく、中には湯舟が一つあるだけのシンプルな作りの銭湯もあるが、私の歩き回った範囲では「そこまでしなくても」と思うほどにエンターテインメント性の高い銭湯が大阪には多いように感じられる。

大阪市城東区にある「ユートピア白玉温泉」は、まさに私のイメージするサービス精神旺盛な大阪の銭湯だ。浴場内にはメインの湯舟の他、エステ風呂、電気風呂、サウナ、水風呂、座り湯、寝湯、露天風呂がある上、子ども向けのプールまである。水風呂には天井から伸びたパイプが定期的に氷を落とす仕掛けになっており、絶えずキンキンの冷たさがキープされている。子ども向けのプールでは、いつ行っても元気な子どもたちが大はしゃぎしている。

大阪市城東区の銭湯・ユートピア白玉温泉(2021年8月撮影)

ユートピア白玉温泉の浴場内(画像提供:ユートピア白玉温泉)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロビーでは牛乳やラムネだけでなく、缶ビールや缶チューハイ、生ビールが販売され(緊急事態宣言発令中は販売を休止している)、焼きそばやピラフなどの軽食も提供される。

ゆったりくつろげるユートピア白玉温泉のロビー(2021年8月撮影)

取材時は酒類の販売が休止されていた(2021年8月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

菖蒲湯やひのき風呂に入れる季節ごとのイベントも開催されるし、「ランナーズ銭湯」といって、周辺を走るランナーたちがユートピア白玉温泉の更衣室を使って着替え、走った後にお風呂で汗を流して帰れるという試みも展開されている。またすごいのが、その営業時間である。朝6時から深夜まで、原則的に365日無休で営業しているのだ。

ユートピア白玉温泉は私の住まいからもそれほど遠くない距離にあるため、たまに足を運んではのんびり過ごして日々の疲れを癒していたのだが、コロナ禍を迎えて以来、なかなか行くことができずにいた。最近の様子についても気になっていたし、どんな業界であれ新型コロナウイルスの感染拡大に大きな影響を受けている中、町の銭湯の視点から話を伺えないかとも思った。取材を申し込んだところ、ユートピア白玉温泉の2代目主人であり、大阪府公衆浴場組合の常務理事も務めている北出守さんにお話を聞かせてもらうことができた。

ユートピア白玉温泉を経営する北出守さん(2021年8月撮影)

 

 

 

 

 

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 第12回
「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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朝6時から365日営業し続ける銭湯「ユートピア白玉温泉」の今