「政府は沖縄を再び戦場にするのか?」自衛隊配備の現場を行く・石垣島編

取材・文・撮影/大袈裟太郎
大袈裟太郎

自衛隊配備のキャスティングボードを握ったのはある宗教団体だった

石垣市、自衛隊建設地に貼られた幸福実現党のポスター 2019年

 自衛隊のミサイル基地建設地には、工事開始前にあった「ジュ・マール ゴルフガーデン」の看板がかかったままだった。元々はグランドゴルフ場として観光客で賑わい、敷地内のガジュマルの前で安室奈美恵さんのMVが撮られたことでも有名だった。2019年8月に訪れた際、工事が進む区域に幸福実現党のポスターが貼られていることに気づいた。この土地の所有者が幸福実現党推薦の石垣市議、友寄英三氏であることがわかるまで時間はかからなかった。市議の友寄氏が、あろうことか住民投票案が否決される前日の2019年1月31日に、この土地を防衛省に売却、一部を賃貸契約したことが地元紙のスクープで明らかになった。

 2月1日の石垣議会で住民投票開催案は否決され、もちろんこの決議に友寄議員は反対票を投じている。賛成反対が同数となり、議長の一票で否決となったのだが、このうちの反対の一票はすでに前日に防衛省と土地の契約を交わした利害関係者の一票であったことには愕然とせざるを得ない。

 国防や安全保障の名の下に、一部の自民党議員やその関連企業が工事を受注する利権構造は、辺野古の基地建設でも度々指摘されてきた。自民党比例復活の國場幸之助議員の血縁である國場建設や、前衆議院議員下地幹郎氏の血縁の大米建設が辺野古の工事を受注しているなど、露骨な例は枚挙にいとまが無い。辺野古の工事受注業者の約8割が防衛省職員が再就職、いわゆる天下り先となっている事実もある。

 しかしこの場所の自衛隊配備には、防衛省と政権与党である自民党に加え、霊言と称し非科学的な言説を流布して信者を獲得している宗教団体・幸福の科学が深く関わっていた。自民党政権と宗教団体との癒着は旧統一教会だけではないのだ。防衛省が行った住民への説明会には多くの信者たちが集い、防衛官僚の発言に拍手喝采を送っていたとの証言がある。

 前述の通り、友寄市議は幸福実現党の推薦を受けている。石垣市の幸福実現党支持者≒幸福の科学信者の実数は、国政選挙の結果から110人─120人前後と算出できる。

 単純計算だが、この票数がなければ友寄市議は落選してしまう。石垣島の自衛隊配備、住民投票否決のキャスティングボートはこの100人の幸福の科学信者によって握られてしまったとも感じられる。

 ちなみに、この石垣市の市長である中山氏も選挙の際、自公維新に加え幸福実現党の推薦を受けている。自治体の長が幸福実現党の推薦を受けているケースは調べても他に例がない。

2019年、工事着工直後の自衛隊ミサイル建設地
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プロフィール

大袈裟太郎
大袈裟太郎●本名 猪股東吾 ジャーナリスト、ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。
やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 
2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り、2020年は米国からBLMプロテストと大統領選挙の取材を敢行した。「フェイクニュース」の時代にあらがう。

 

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