トランプvs民主党、ウクライナ疑惑でついに弾劾対決!

米国ニュース解説「トランプ弾劾・解任への道」第6回

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ジャーナリスト矢部武氏による米国ニュース解説「トランプ弾劾・解任」への道。1年半前にお届けした「ロシア疑惑」は逃げ切ったトランプ大統領だが、今度は「ウクライナ疑惑」が浮上。これに対して、下院・民主党はいよいよ弾劾裁判に乗り出し始めた。弾劾となればダメージは必至。強気の姿勢で乗り切ろうとしているトランプも今回はかなり焦っている様子。「ウクライナ疑惑」の解説と、今後の予測を矢部氏がお届けする!

 

 トランプ大統領に再び激しい嵐が迫りつつある。2年近くに及ぶロシア疑惑の捜査が終わり、弾劾の懸念がなくなったと思った矢先、新たな疑惑が急浮上したのだ。自らの再選を有利にするために外国の首脳に圧力をかけ、ライバル候補の民主党・バイデン前副大統領に関する調査を行うように求めたとされる「ウクライナ疑惑」である

 具体的には2019年7月25日、トランプ大統領はウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、「米国はこれまでウクライナに莫大な支援をしてきた。そこでお願いがある」と切り出し、「バイデン氏の息子について多くのことが言われている。バイデン氏が訴追を阻止したのかどうか、多くの人が知りたいと考えている。司法長官と協力してほしい。(私の)個人弁護士のジュリアーニ氏とバー司法長官に電話させる」と述べたというのだ。これが事実だとすれば、外国人に対して選挙活動への貢献を求めることを禁止した「連邦選挙運動法」や「合衆国憲法」に違反する可能性がある。

 バイデン親子の件とは、同氏が副大統領としてウクライナの汚職問題に取り組んでいた2016年に、息子のハンター氏が役員を務めていたウクライナのガス会社「プリスマ社」の汚職・脱税の捜査を担っていたショーキン検事総長を解任させようとしたが、それは息子を守るためではなかったのかとの疑惑である。

 たしかにバイデン氏がウクライナ政府に対して、要求に応じなければ米国による10億ドル(約1080憶円)の保証付き融資を停止すると脅したことや、副大統領の息子のハンター氏がプリスマ社の役員として月5万ドルの報酬を得ていたことはかなり問題視された。

 しかし、当時、ショーキン検事総長は西側諸国から「汚職捜査を妨害している人物」として見られ、米国だけでなくEU諸国も辞任を求めていたことを考えれば、バイデン氏が個人的利益のために解任を求めたとの見方は説得力を欠く。ウクライナの検察当局も今年5月、「バイデン親子が不正行為に関与した証拠は一切ない」と発表している。にもかかわらず、トランプ大統領はこの話を再び持ち出し、民主党の有力候補であるバイデン氏への攻撃材料にしようとしたのである。

 さらに問題なのは、ホワイトハウスの高官がこの電話会談記録を、機密情報を扱う別のコンピューターシステムに移して閲覧できないようにしたことだ。機密を含まない外国首脳との会談がこのシステムで扱われることはなく、一部の高官が「この会話はまずい」と考えたからこそ、そうしたのであろう。この事実が公になったのは内部告発した人がいたからだが、それについては後で詳しく述べる。

 さらに、この疑惑のみならず、司法省には「議会にすみやかに提供されるべき内部告発状が届かないように隠蔽したのではないか」(後述)との疑惑が出ている。

 これに対して9月24日、野党民主党の指導者ペロシ下院議長は、「トランプ大統領の行動は大統領職の宣誓に対する裏切り、米国の国家安全保障と選挙の健全性に対する裏切りという事実を露呈した」と述べ、「下院は正式に弾劾に関する調査を開始する」と宣言した。

 ペロシ議長はこれまで、ロシア疑惑などの捜査が行われている間ずっと、「民主党にとって裏目に出るリスクがある」として弾劾に向けた調査には消極的だった。しかし、今回はトランプ大統領の不正を示す電話会談の記録や、信用できる内部告発者の告発状という「証拠」が存在するため、自信を持って弾劾調査に踏み切ったようである。

 

電話会談の記録と内部告発状が示すもの

 下院民主党の強い要求に屈服する形で、ホワイトハウスが公表した電話会談の記録と内部告発文にはいくつかの重要な点が示されていた。まず、トランプ大統領が電話会談の1週間前にウクライナへの4億ドル(約430憶円)の軍事支援を保留したうえで、ゼレンスキー大統領に頼みごとをしたことだ。これでは「頼みを聞いてくれなければ支援はあげない」と、見返りをちらつかせながら圧力をかけたと受け取られても仕方ないだろう。

ウクライナのゼレンスキー大統領(左)との電話会談記録を隠蔽したことで、トランプ大統領の後ろ暗さがさらに高まってしまった。(写真/ユニフォトプレス)

 大統領の上級顧問ケリーアン・コンウェイ氏は、「会談のなかで具体的な交換条件が示されたわけではない。大統領は来年の選挙にもふれていない」とし、圧力について否定したが、問題はトランプ大統領が自分の個人弁護士であるジュリアーニ氏と話すようにゼレンスキー大統領に求めたことだ。個人弁護士は米国の国益や外交のためではなく、雇い主の利益のために働く役割であるため、弁護士と話すように言ったことは、トランプ大統領が再選を有利にするという「個人的利益」のために働かせたと思われても仕方ないのだ。

 実際、ジュリアーニ氏はバイデン親子の件で、ウクライナの元政府高官や元検察官と話していたことがわかっているし、内部告発状によると、国務省の複数の高官が、外交権限のないジュリアーニ氏がウクライナ関連で積極的に行動しているのを深く憂慮していたという。ジュリアーニ氏は国務省の一部の高官から許可を得ていたというが、ポンペオ国務長官がその事をすべて認識していたのかどうかも問題となっている。下院情報委員会では近日中に、この国務省高官とポンペオ国務長官、さらにジュリアーニ氏にも召喚状を出して話を聞く予定にしている。

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