2019年春、ロシアで。取材こぼれ話1

宇都宮直子
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 2019年の春、ロシアを訪れた。
 初めてではない。たしか、4回か5回めだと思う。ただ、試合を追いかけていたので、それまでの季節はすべて冬だ。とにかく、寒かった。
 訪れるたびに、おなかを壊した。脱水症状で倒れ、救急車で搬送されたりもした。おなかがまあまあなときは、風邪を引いた。必ずである。
 強がりで言うのではないが、私はロシアが大好きだ。タフな国だが、その硬質さに魅了されている。異国を強く感じさせるところがいいと思う。
 もちろん、フィギュアスケートが、文化として存在しているのも素晴らしい。フィギュアスケートを愛する私には、夢の国だ。学ぶことが多岐にわたり、たくさんある。
 そういうわけで、私は冬ではないロシアを訪れ、本を書いた。尊敬する都築章一郎コーチの足跡を追いかけた。

 エリザベータ・トゥクタミシェワ選手(以下、敬称略)と会ったのは、サンクトペテルブルクにあるカフェだった。
 彼女は、バカンスから帰ってきたばかりで、少し、陽に焼けていた。ゴールドにラメの入ったアイラインが、よく似合っている。華奢で美しい人だ。
 リンクで見せる妖艶さを、彼女は「自身の内にあるもの」だと言ったが、その日は純粋さをより強く感じさせた。
 現在、女子シングルはロシアの十代が席巻している。4回転の申し子たちが、勝利を欲しいままにしている。

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プロフィール

宇都宮直子

ノンフィクション作家、エッセイスト。医療、人物、教育、スポーツ、ペットと人間の関わりなど、幅広いジャンルで活動。フィギュアスケートの取材・執筆は20年以上におよび、スポーツ誌、文芸誌などでルポルタージュ、エッセイを発表している。著書に『人間らしい死を迎えるために』『ペットと日本人』『別れの何が悲しいのですかと、三國連太郎は言った』『羽生結弦が生まれるまで 日本男子フィギュアスケート挑戦の歴史』『スケートは人生だ!』ほか多数。2020年1月に『羽生結弦を生んだ男 都築章一郎の道程』を、また4月には『三國連太郎、彷徨う魂へ』が刊行されている。

 

 
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