『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』 泉 房穂著

政治家の条件は「志」。それは「士」の「心」である

水道橋博士

 ボクは政治家の条件は「志」だと信じている。それは「士」の「心」である。

 そして今は政治の大転換期だ。2024年だけでも都知事選、立憲民主党代表選、自民党総裁選を経て衆院選。米大統領選後の兵庫県知事選は大騒動となり今も紛争中。来年は都議会選、参院選だ。世界も日本も地方も全てが危うい。

 本書の著者は、今後の日本の政局で最重要人物、キーパーソンと目される泉房穂氏である。

 昨年(2023年)、12年の任期をつとめた明石市長を辞職すると、芸能大手ホリプロ所属のコメンテーターに転身し、売れっ子になると「顔」を全国区で売りつつ、自身の政治活動は自粛している。

 さて、泉房穂はこの本で自らの「師」と「志」を語る。

 師匠とは2002年10月、右翼団体代表を名乗る男に襲撃され命を落とした野党政治家・石井紘基だ。石井は犯罪被害者救済活動、特別会計、特殊法人関連の問題追及等で日本の利権の秘所を暴き、地獄の蓋を開けて晒す活動で注目を浴びていたが志半ばに斃れた。

「師」の「死」は石井の最初の秘書である泉房穂に「遺志」を継がせた。

 石井は日本は特権層が利権を寡占する「官僚国家」と看破し、著者は、今も続く石井の問題提起の意義と意味を説きあかし、その後は石井に纏わる人たちとの対談が占めている。

 ボクが2022年の参議院選挙当選後に抱負を聞かれて「議会で『国会の爆弾男』と呼ばれたい!!」と答えたのは、ボクも政治家として石井紘基をロールモデルにしたいと思っていたからだ。しかし、鬱病に苛まれボクの志も半ばに潰えた。

 人生に「師」を戴き、その遺志を受け継ぎ、「死」も怖れず「志」に生きること。本書は予言と希望に満ちた檄の書であり、なにより初志貫徹を宣言している。

 著者は、市長時代、部下に「火をつけてこい!」との一言でパワハラを問われ炎上した。しかし、泉房穂氏は近い将来、自ら炎(ホムラ)立つはずだ。志とは半ばに終わらず、全うすることなのだ。

関連書籍

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プロフィール

水道橋博士

(すいどうばしはかせ)
1962年岡山県生れ。ビートたけしに憧れ上京するも、進学した明治大学を4日で中退。弟子入り後、浅草フランス座での地獄の住み込み生活を経て、86年に玉袋筋太郎と漫才コンビ・浅草キッドを結成。90年のテレビ朝日『ザ・テレビ演芸』で10週連続勝ち抜き、92年テレビ東京『浅草橋ヤング洋品店』で人気を博す。幅広い見識と行動力は芸能界にとどまらず、守備範囲はスポーツ界・政界・財界にまで及ぶ。著書に『藝人春秋』(1~3巻、文春文庫)など多数。
水道橋博士の日記はこちら→ https://note.com/suidou_hakase

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