ある日、いきなり大腸がんと診断され、オストメイトになった39歳のライターが綴る日々。笑いながら泣けて、泣きながら学べる新感覚の闘病エッセイ。

さて、ワクワクドキドキの抗がん剤治療も、本日で無事にシーズン1、もとい1クール目が終わりました。「クール」っていかにも抗がん剤治療って気がしない? なので、わたしはこれを海外ドラマ風に「シーズン」と呼ぶことにする。勝手に。
シーズン1は、基本的には全然元気だった。とはいえ、小さいながらもいろんな副作用がじわじわ出てきたな〜という感じ。今後同じ治療を受ける誰かのために、副作用の記録を残しておこうと思います。
病名と状態
S状結腸がん 穿孔(大腸がん)ステージⅢc
確認できたがん腫瘍は、手術によりすべて取り除くことができている
治療法
オキサリプラチン点滴とカペシタビン錠を併用する化学療法、CAPOX療法(XELOX療法)
治療の流れ
以下の3週間を1クールとし、合計8クールを予定
- 初日にオキサリプラチン点滴
- 初日夜〜15日目の朝まで、カペシタビン錠を朝夕5錠ずつ内服
- 15日目の夜〜21日目まで1週間休薬
治療の目的
がん細胞を死滅させ、根治を目指すものとする
避けたほうがよいとされる行動
- 冷たい物を触る、食べる
- 身体を冷やす
- 日焼け
- 皮膚の乾燥
- 長時間歩く、激しい運動をする
現れやすいとされる副作用
- 末梢神経症状(手足のしびれ、舌や喉の違和感など)
- 手足の皮膚炎、色素沈着
- 下痢
- 吐き気、嘔吐、食欲不振
- 骨髄抑制(感染症や貧血、出血など)
- アレルギー症状(皮膚の発疹、赤み、かゆみなど)
- 倦怠感、疲労感
実際に起こったこと
1日目
- 吃音が出て、呂律が回らなくなる(点滴直後〜2時間程度)
- 飲食時、喉や口内に違和感
- 手先がしびれる。特に、冷たい物に触れた際のしびれ(冷感刺激)が強く出る
2日目
- 貧血を2回起こす
4日目
- 飲食時の違和感がなくなる
5日目
- 手先のしびれがなくなる。ただし、冷感刺激は持続
7日目
- 右足の裏に5mmほどのシミができる
8日目
- 右手の親指に1〜2mmほどの薄いシミが3つできる
9日目
- 不正出血
- 膀胱炎
10日目
- 右手の親指に1mmほどの薄いシミがもう1つできる
- 左手の中指に3mmほどの薄いシミができる
12日目
- 首と両腕にかゆみを伴うじんましんが出る
13日目
- 首のじんましんが広がる
14日目
- 左足の甲に5mmほどの薄いシミができる
- 膀胱炎が悪化し眠れなくなり、家にあった抗生物質を飲む
- 7、8日目にできたシミが濃くなっているのを確認
15日目
- 首と腕のじんましんがほぼ消える。ただし、かゆみは継続
- 膀胱炎と不正出血の症状が治まる
17日目
- 右足の裏に3mmほどの薄いシミがもう1つできる
19日目
- 外出時に5分ほど貧血を起こす
20日目
- 手指の皮膚が弱っているのを感じる
5日目まで続いた手先のしびれは、「痛い」ではなく「なんかピリピリするな〜」という感じ。それと「薄いシミ」としているものは、注意しなければまったく気がつかない程度のもの。20日目に感じた皮膚の弱りは、ペットボトルのキャップを素手では開けられなくなっていることで気がついた。痛かった。石川啄木くらい、じっと手を見てしまった。
抗生物質は、飲んだ翌日にいくつか症状の改善が見られているので、次の通院時に処方をお願いするつもりでいる。あとは、皮膚の薬も。じんましんは消えるからともかく、シミはメンタルをゴリゴリ削ってくるので、できる限り予防したい。
気をつけたこと
- 家では、基本的に布手袋と厚手のルームソックスを着用
- 水や冷たい物に触れる際は、厚手のゴム手袋を着用
- 手足の保湿やマッサージはこまめに行う
- 冷たい飲み物はしばらく常温に置いてから飲む
- 飲食店では、アイスドリンクは氷抜きでオーダーする
- 外出時は、足の負担が軽いスニーカーを履く
- 日中の外出時は、日傘と日焼け止めで紫外線防止
- 家のレースカーテンは紫外線カット効果のある物にする
- カペシタビン錠は素手で触らない
ご存知ですか? 一部のコーヒーチェーンでは、氷抜きでアイスドリンクを注文すると、その分ドリンクの量を増やしてもらえることを。これはお得。けれど、いくら氷が入っていないとはいえ、常温になるまでは飲みにくい。喉が渇いているときに、じれったい思いをした。
水や冷たい物以外で手先への刺激を感じたもの
- 金属(ドアノブ、トイレのレバー、シャワーノズルの接続部、家の鍵、電車の手すり、まつ毛のビューラーなど)
- ジェル状のもの(メイク落としや美容液など)
- ウェットティッシュ
- 濡れた洗濯もの
- MacBookのトラックパッド
- MacBookのキーボード
- ていうかMacBook
いずれも最初の1週間程度でほとんど感じなくなったし、そもそもの症状自体も軽度。ただし、MacBookは触れる時間が長いため、どうしてもピリピリが蓄積してしまう。特にトラックパッドは、素手かスマホ用手袋でないと反応しないのでやっかい。マウスは必須。あと洗濯物は、最後の最後まで素手では触れられなかった。
注意が必要なシーンと解決策
● 外出先で手を洗うとき
→ 除菌ウェットティッシュで代替
● 料理、皿洗い
→ ゴム手袋をする、お湯を使う
● 洗濯物を干すとき
→ ゴム手袋をする
● 外出時の水分補給
→ 常温の水を持ち歩く
→ 飲食店では氷抜きでドリンクをオーダーする
● 電車で手すりを掴むとき
→ ハンカチ越しに掴む、金属の手すりではなくつり革を掴む
● コンビニやスーパーで冷たい物を取るとき
→ ハンカチ越しに掴む
一番悩ましかったのは、外出時のお手洗い。水で手を洗うと手先がしびれてしまうので、やむを得ず、除菌ウェットティッシュで手を拭いていた。周りの人に「あの人、手、洗ってなくない?」と思われたくなかったため、手洗い場には行くだけ行って、蛇口の前でこそこそとウェットティッシュを使っていた。誰もそこまで見ていないって。
料理は、いちいちゴム手袋をするのは億劫だし、細かい作業がやりにくくなってしまうものの、なんというかまあ慣れた。ただしそれは、元々凝った料理を作らないからだと思う。そんなわたしでも冷蔵庫くらいは使う。冷蔵庫や冷凍庫の物に触れると、特に最初の1週間は、手袋越しでも明らかにしびれが増して不快だった。なんとかならないものかと考えるうちに、食材をお手玉みたいに左右の手でホイホイと投げる技を考案。やるとやらないとでは、冷感刺激の出方にかなり差が出る。最初は、何やってんだ? という気になるけれど、ノッてくるとそれなりに楽しい。いつか卵を落として割る気がしている。
抗がん剤は、がん細胞と正常な細胞を見分けられずにすべての細胞を攻撃してしまうため、裏を返せば不調なのは薬が効いている証拠でもある。ただし、副作用が重いから効いている、軽いから効いていないということはないらしい。
さて、明日からはシーズン2。次回は一体どうなることやら。
(金曜更新☆次回は4/4公開)
プロフィール

ライター
1985年生、都内在住。2024年5月にステージⅢcの大腸がん(S状結腸がん)が判明し、現在は標準治療にて抗がん剤治療中。また、一時的ストーマを有するオストメイトとして生活している。日本酒と寿司とマクドナルドのポテトが好き。早くこのあたりに著書を書き連ねたい。