宇都宮直子 スケートを語る 第5回

トルソワ中編

宇都宮直子

 エフゲニー・プルシェンコは、2017 年4 月5日にフィギュアスケートアカデミー「ANGELS OF PLUSHENKO」を、モスクワに設立した。

 ロシアの報道に基づけば、サンクトペテルブルグにもベースを持っている。

 アイスホッケーチーム「スカ」とプルシェンコの共同プロジェクトという位置づけだ。ベースは、「スカ」の「ホッケーの街」スポーツ宮殿の中にある。

 ベースをオープンするにあたっては、ウラジーミル・プーチン大統領の側近のひとり、ロマン・ローテンベルク氏の尽力を得ている。

 ローテンベルク氏は、ロシア最大企業のひとつガスプロム社の副社長であり、「スカ」の副会長でもある。つまり、大富豪だ。

 氏の娘がプルシェンコのアカデミーの一員であるのもあって、サンクトペテルブルグに関しては、ローテンベルグ氏の後ろ盾があって動いているということらしい。

 ただ、プルシェンコ自身はサンクトペテルブルグにはいない。モスクワにいて、指導をしている。

 ローテンベルク氏のような大物が後ろ盾とは、さすがプルシェンコと言わざるを得ない。「皇帝」に相応しい現在とも言えるだろう。

「ANGELS OF PLUSHENKO」の実態を、私は詳しくは知らない。ホームページにはコーチ陣が写真付きで紹介されている。だが、その他の詳細は載っていない。

 アカデミーの雰囲気は、インスタグラムの写真から伝わってくる。

 しかし、新型コロナウイルスの影響で氷上練習が叶わなかった影響か、アップされている写真は概ね古い。

 現地報道によれば「ANGELS OF PLUSHENKO」はオープン直後、「授業料の高さ」で話題になっている。 

 いちばん高額のクラスでは、月額15 万ルーブル(現在はルーブルが著しく下落しているが、当時のルートでは30 万円相当)が必要になる。

 それには氷上トレーニング48 時間、コリオグラフィ16 時間、フロアトレーニングが12時間が含まれる。

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宇都宮直子 スケートを語る

ノンフィクション作家、エッセイストの宇都宮直子が、フィギュアスケートにまつわる様々な問題を取材する。

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プロフィール

宇都宮直子
ノンフィクション作家、エッセイスト。医療、人物、教育、スポーツ、ペットと人間の関わりなど、幅広いジャンルで活動。フィギュアスケートの取材・執筆は20年以上におよび、スポーツ誌、文芸誌などでルポルタージュ、エッセイを発表している。著書に『人間らしい死を迎えるために』『ペットと日本人』『別れの何が悲しいのですかと、三國連太郎は言った』『羽生結弦が生まれるまで 日本男子フィギュアスケート挑戦の歴史』『スケートは人生だ!』『三國連太郎、彷徨う魂へ』ほか多数。2020年1月に『羽生結弦を生んだ男 都築章一郎の道程』を、また2022年12月には『アイスダンスを踊る』(ともに集英社新書)を刊行。
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