このニュースに、ロシアの人々は驚いた。優秀な子どもたちは、無料で英才教育を受けられる。それが当然だと考えられていたからだ。
小著『羽生結弦を生んだ男 都築章一郎の道程』の中でも、ロシアの重鎮たちが国家の支援による英才教育について触れている。無償での育成は、ロシアの伝統、歴史でもあった。
エフゲニー・プルシェンコのスタートはまったく新しかった。自信の表れとも言えるかも知れない。あるいは、プライドだろうか。
彼のスタイルは一時期、スキャンダラスに取り上げられたそうだが、道は始まったばかりだ。稀代の天才が、選手をどう育てていくのか、興味は尽きない。楽しみだ。
ただし、懸念はある。ネットを眺めた限りで言えば、「ANGELS OF PLUSHENKO」の環境は、国営スポーツ教育センター「サンボ70」に及ばない。
実績もそうだ。現状は「サンボ70」の名伯楽、エテリ・トゥトベリーゼの圧勝だ。彼女は、はるか遠いところにいる。巻き返すには、かなりの辛抱が必要だろう。
エフゲニー・プルシェンコの自伝を読んだが、彼はけっこう辛抱強い人で、負けるのを何よりも嫌っている。努力の人でもある。
言葉が適切かどうかはわからないが、いろいろ面白くなってきたと思う。
「トルソワ」というタイトルでエッセイを進めているのに、なかなか「トルソワ」に入れないでいる。ロシアについては、書きたいことがありすぎるのだ。
プルシェンコのことも好きだから、つい長くなる。タイトルを「プルシェンコ」としたほうがよかったかも知れない。
たいへん申し訳ないが、もう一編、トルソワをテーマに綴りたいと思う。彼女への応援歌を書きたくて始めたのに、肝心の応援をまだ伝えられずにいる。
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ひとことだけ、触れておきたい。ステファン・ランビエールの髪が長かろうが短かろうが、彼は素敵だ。
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ノンフィクション作家、エッセイストの宇都宮直子が、フィギュアスケートにまつわる様々な問題を取材する。