新型コロナウイルス感染症の影響で、社会は劇的に変わった。すべてが、と言っても過言ではないだろう。
フィギュアスケートも、そうだ。2019~2020シーズンの世界選手権(カナダ、モントリオール)を開催できなかった。今シーズンも、不透明だ。先のことは、まだ誰にも決められない。
日本の状況は、世界から「ミラクル」と評されているらしい。ニュースでWHO の人が、そう話していた。「奇妙な成功」とも報道されている。
強制力を持たない「要請」により、感染者が減少に転じたこと、死亡率が低く抑えられていることなどが「ミラクル」であり、「奇妙」なのだという。
だが、それらは決して奇蹟ではない。日本人は気概を示した。成功は、市井の人の辛抱や努力、医療従事者の熱意と献身の賜物だと思う。
国々で対処の仕方は違っても、世界中が同じ未知のウイルスと戦っている。忍耐が厳しく求められている。収束を迎える日まで、ずっとだ。
この連載も今は取材が難しいが、置かれた環境の中で、ゆっくり、精いっぱい頑張りたいと思っている。
前回の「ひとつき」について、多くの方が言葉を寄せてくださった。それがほんとうに嬉しかった。だから、本文に入る前に、どうしても伝えておきたい。
「ありがとうございました。とても力になりました。感謝します」
さて、ここからトルソワの話をする。
ノンフィクション作家、エッセイストの宇都宮直子が、フィギュアスケートにまつわる様々な問題を取材する。
プロフィール
宇都宮直子
ノンフィクション作家、エッセイスト。医療、人物、教育、スポーツ、ペットと人間の関わりなど、幅広いジャンルで活動。フィギュアスケートの取材・執筆は20年以上におよび、スポーツ誌、文芸誌などでルポルタージュ、エッセイを発表している。著書に『人間らしい死を迎えるために』『ペットと日本人』『別れの何が悲しいのですかと、三國連太郎は言った』『羽生結弦が生まれるまで 日本男子フィギュアスケート挑戦の歴史』『スケートは人生だ!』『三國連太郎、彷徨う魂へ』ほか多数。2020年1月に『羽生結弦を生んだ男 都築章一郎の道程』を、また2022年12月には『アイスダンスを踊る』(ともに集英社新書)を刊行。