ガザの声を聴け! 第33回

マジドとアマル――ガザの希望と絶望 前編

清田明宏
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アマルさんの仕事の話をしよう。

「仕事はどう?」と聞くと、アマルさんの会社Sketch Engineeringは3輪の運搬機を100台作り、何と78台を既に売ったそうだ。1台の値段はと聞くと、200イスラエル・シュケル、日本円で約6500円。これは決して安い価格ではない。というか、ガザの標準からすると、とても高い。でもすごく売れている。

アマルさんの案内で彼女の会社に行ってみることにした。会社はガザ市内のビルの6階にある。道中、電気は止まっているので辺りは真っ暗だ。ただ、そのビルには発電機があり、エレベーターも動いていた。そして、彼女の会社も電気がついていて、とても明るい。社内も広い。300m2はあるだろうか。その中の一室は、工作室だ。ここでプロトタイプを作っているそうで、様々な工具が置いてある。作りかけのプロトタイプも複数ある。とても雑多としているが、そこがいい 。アマルさんと同僚を真ん中に写真を撮った。ここが 彼女の会社が生まれたところだ、と思うと感激する。

完成した様々なプロトタイプを見せてもらった。赤、青、黄色と様々である。何でこんなに数があるのかと聞くと、改良をどんどん重ねているからだ、とアマルさんは言った。それらを横一列に並べて、また写真を撮った。二人とも、とても誇らしげに笑ってくれた。

「実は最新の運搬機には、今まで世界で誰もやっていない、新しい工夫があるんです」とアマルさんが話す。私が「それはどこ?」と聞くと、その部分を指して、とても自慢そうに話してくれた。今、特許を申請中だそうだ。商品を売る努力もすごい。部屋の隅に置いてある展示会用に作った、顔出しパネルを見せてくれた。運搬機を引く形にできており、そこに自分の顔を入れられるのだ。

大きな成長をしている。会社も、アイデアも、そして熱意も。

私もその場で1台買った。もちろん代金の200イスラエル・シュケルを払ってだ。これは私にとって宝物だ。これで今まで売れたのが79台になる。 嬉しくて、そのまますぐ、UNRWA「ウンルワ」のガザ事務所に持って行った。本当は今住んでいるアンマンに持って帰りたかったのだが、今回ガザを出るときに乗った車が小さく、同乗者の荷物も多かったので、車に入りきらず、ガザの事務所に置いてきた。このままガザの事務所で使ってもらうのもよし、次回ガザに行った時に持って帰るもよし。私の夢も広がる。

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ガザの声を聴け!

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

プロフィール

清田明宏
1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。
 
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マジドとアマル――ガザの希望と絶望 前編

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