CAPOX? XELOX? それともティファニーのネックレス?
ある日、いきなり大腸がんと診断され、オストメイトになった39歳のライターが綴る日々。笑いながら泣けて、泣きながら学べる新感覚の闘病エッセイ。
大腸がんの再発率を下げるためにわたしが受けている抗がん剤治療「CAPOX療法」は、どうやら「XELOX療法」という別名もあるらしい。
CAPOX療法という名称は、治療に使われる2種類の抗がん剤、
- カペシタビン(CAPecitabine)
- オキサリプラチン(OXaliplatin)
に由来しているのだけれど、カペシタビンとは有効成分の名称で、商品名は「ゼローダ(XELoda)」という。だから、ゼローダとオキサリプラチンで「XELOX療法」。
どうして別名があることに気づいたのかというと、ネット上にあるCAPOX療法の体験談が少ない気がして不思議だったから。「XELOX療法」で調べたほうが、いろんな情報が出てくるね。なるほどな。
CAPOX療法またはXELOX療法で治療を行った諸先輩方のブログやSNSの投稿などを読むと、1クール目で何かしらの副作用が出て、2、3クール目あたりで、すでにつらそうな方が多いなぁという印象。薬が合わなくなってしまったり、副作用がきつかったりで、治療を途中で終えている方も少なくない。あるいは、薬を減量している方もいるようだ。わたしはギリギリ30代とがん患者にしては若めだし、体力的にもなんだかんだ完走できるのでは……? などと淡い期待を抱きつつ、つらくなったらわたしも途中でやめてしまうだろうな、とも思う。主治医も「日常生活に支障をきたしてまでやるものじゃない」って言っていたし。
そもそもCAPOX療法って、全8クールを終えたところで、5年後の生存率は10%も上がらないらしい。先生曰くの、わたしの場合は、ですけれど。本当に気休め。気休めのために、安くはないお金をせっせと垂れ流していて涙目。いっそ治療なんてやめて、欲しかったティファニー ハードウェアのネックレスでも買おうかなぁ……。え、待って。今ティファニーのサイトを見たら、アホほど値上がりしている。治療をやめたところで全然買えませんでした。いや、でも、今までとこれからのがん治療にかかる医療費を合わせたら余裕で買えるな。うーん、やっぱり泣いてもいい?
抗がん剤治療をするより憧れのネックレスを身につけたほうが、テンションが上がって長生きできちゃう可能性はあるけれど、ティファニーが保険適用じゃない以上、このまま大人しくCAPOX療法を続けるよりほかはない。それが標準治療なのだから。いや、第2、第3の選択肢もあるにはある。民間療法とか、治験とか。でも、わたしは今の主治医が大好きだし、自分ががんや治療法について調べたところで先生の知識を超えることは逆立ちしたってありえないので、「先生が言うならそうしまーす」というスタンスでがん患者をやらせてもらっている。「先生の言う通りにすれば治ると信じている」というより「先生についていくと決めたのは自分なので、どう転んでも文句はないです」という感じ。
そりゃね、やっぱり怖いよ。怖くないと言ったら嘘になる。本当にこの治療法でいいのかどうか、わたしの選択は間違ってはいないだろうか。でもさ、決めたから。わたしは標準治療でやっていく。そしてそれは、わたしの意思だ。
先生や病院の治療方針を疑わないというマイルールを設けたことで、悩んだり調べたりする時間のロスが最小限に抑えられてお得。やっぱり餅は餅屋に限る。こちとら根っからの文系なんでね。マイルールの適用は、たとえばお酒なんかもそう。わたしは今も週1程度で飲んでいるんですけれど、飲酒なんて論外! といったことが書かれている本はたくさんあって。でも、主治医や管理栄養士さんが「常識的な範疇ならいい」と言うのでいいことにしている。酒が身体にいいわけねえだろ、そんなことはわかってやってんだよ! さすがに飲む量とペースはかなり落としましたが。というか「常識」って難しい。病院で栄養指導を受けながら、かわむらは「あなたの常識とわたしの常識が一緒とは限りませんけれどね……」などと思ったとか、思わなかったとか。いえ、冗談です。自分の身体のことなんだから、屁理屈を言わずに考えよう。
とにかく、2クール、3クールと治療を重ねるにつれて表れるかもしれない副作用について、XELOX療法の存在を通じて傾向と対策を知れたのは大きい。自分は大丈夫と過信せず、かと言って過度に怯えもせず、ケースごとにリスクヘッジを図りながら今後の副作用に備えていきたいと思います。
なーんて言っても、まあ、何をしたってだめなときはだめなんですけれど! しょうがない、そのときはそのときだ。なってみてから考えることにする。
(毎週金曜更新♡次回は2月7日公開)
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昨日は10年来の友だちと、新宿ワシントンホテルの地下にあるローソンに併設されているバー「お酒の美術館」へ行った。15時から営業! コンビニのフード持ち込みOK! はい、最高。ローソンで買ったチーズちくわと合鴨スライス、カマンベールチーズを炙って出してもらって、これでいいんだよ〜ってなった。友だちが「まみちゃん……生きててよかった」なんて真っ昼間のローソンでハグしてくれたときに、不覚にも泣きそうになってしまったのは内緒。治療が無事に終わったら、今度はちゃんとオーセンティックなバーにでも行きましょう。
トップ画像はワシントンホテルの目の前にある、我らが本丸、東京都庁。建築が好きなので、かわむら、用もないのに都庁に寄りがちです。
ある日、いきなり大腸がんと診断され、オストメイトになった39歳のライターが綴る日々。笑いながら泣けて、泣きながら学べる新感覚の闘病エッセイ。
プロフィール
ライター
1985年生、都内在住。2024年5月にステージⅢcの大腸がん(S状結腸がん)が判明し、現在は標準治療にて抗がん剤治療中。また、一時的ストーマを有するオストメイトとして生活している。日本酒と寿司とマクドナルドのポテトが好き。早くこのあたりに著書を書き連ねたい。