「それから」の大阪 第14回

道頓堀を立体看板でド派手に彩る「ポップ工芸」

スズキナオ

大阪に観光に来たとしたら、多くの人がミナミの道頓堀を歩くだろう。「かに道楽」の本店があって、グリコ看板が見えるフォトスポットも近く、くいだおれ人形があって、両側にたこ焼き屋が並び、コロナ禍以前は真っ直ぐに歩くのが困難なほど賑わっていた通りだ。

私自身はそれほど頻繁に歩くわけではないが、たまに通りかかると、外部から見た大阪のイメージが結晶となって具現化されたかのような雰囲気に圧倒される。

道頓堀を歩いていれば必ず目に入ってくるのが“立体看板”だ。かに料理の有名チェーン・かに道楽の本店に取り付けられた動く巨大看板は道頓堀のシンボルのようになっているし、それ以外にも両側から通りに覆いかぶさるように派手な看板がいくつも突き出している。

道頓堀らしい景観を生み出すのに大きな役割を果たしていると思われる数々の立体看板の多くを手掛けているのが、大阪府八尾市に工場を構える「ポップ工芸」という企業だ。

ポップ工芸は1986年創業の看板制作会社で、大阪だけでなく日本全国、そして海外向けにも立体看板を作っている。道頓堀を代表する立体看板である「金龍ラーメン」の龍のオブジェも、そのポップ工芸が制作したものだ。

道頓堀の名物店・金龍ラーメンの立体看板を制作したのが「ポップ工芸」だ(2021年10月撮影)

聞くところによると、道頓堀に存在する立体看板の7割ほどはポップ工芸が作ったものなのだという。つまり、いかにも道頓堀らしいと感じるような風景のうち、ある程度の部分はこの一つの企業の手によって生み出されているというわけだ。

道頓堀から観光客の姿が消え、以前の様子が信じられないほどになったコロナ禍の今、ポップ工芸という企業がどんな取り組みをし、どんな展望を持っているのかを伺いたく、取材を申し込むことにした。

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 第13回
「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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