法律は、誰が作り、誰のためにあるのか。『はじめての公共訴訟 社会を動かす、私たちのツール』刊行記念トーク最終回では、再審法改正や国旗損壊罪法案を題材に、民主主義のあり方を掘り下げる。主権者である私たちは、社会のルールづくりにどう関わることができるのか。弁護士の亀石倫子さんとラッパーのダースレイダーさんが、「私たちの社会」を取り戻すための視点を語り合った。
構成:稲垣收 写真:CALL4、集英社新書編集部
*本記事は2026年6月7日、MoMoBooks(大阪)で行われたトークを編集、採録したものです。
「法律を変える」は、なぜ難しいのか

ダースレイダー(以下D) 最近の再審法の改正問題で、稲田朋美議員が会議で激怒し「稲田の乱」(*1)と言われて話題になりましたが、稲田議員同様、再審法の改正で頑張っている議員で井出庸生(いで ようせい)という人がいるんですが、実は僕の中学、高校(武蔵中学、武蔵高校)の同級生なんです。
*1 再審制度の見直しを巡る議論で、法務省は、裁判所による再審開始の決定に対して検察官が不服を申し立てられる検察官抗告を存続させる意向を表明。だが「検察官による抗告こそ、誤審による冤罪被害の早期救済を阻む主因だ」と議員有志らが猛反発。4月7日の会議では、弁護士でもある稲田議員が「マスコミが(外に)出た後、(法務省側は)1ミリも私たちの言うことを聞かないじゃないですか。ほとんどの議員が抗告禁止って言っているにもかかわらず、これをまったく無視している」と大声で怒りの訴えをした。ネットでこの動画が拡散されると「稲田の乱」と呼ばれ話題になった。
亀石 そうなんですよね。
D いまだに年に何回かは会っているんですけど。彼は東京大学で野球部のキャプテンだったんですが、当時は筋肉野郎だったので、こんなに立派な議員になるとは思ってもみませんでした(笑)。
亀石 そうですか(笑)。SNSにも、鉄棒などでトレーニングしている動画をアップしていますよね。
D そう。国会にも、自転車に乗って通っていたりするという(笑)。
ただ、彼はずっと野党議員だったんですよ。みんなの党とか、結いの党とかにいたんですけど、最終的に自民党に移ったんです。
自民党に移るタイミングでも同級生で集まって「頑張れよ」みたいな話をしたんですけど、彼は、実は性犯罪に関する刑法改正(*2)とかをずっとやろうとしていて、「そうした法律を変えようとしてきたんだけど、野党にいると実際に法律を変える作業に全然関われない」と。「国会質問などをすごくたくさんしてきたけど、全然法律を変えることができないから、自分がやりたいことを実現するために自民党に移る」と言っていました。
でも自民党、与党に移る人は、ほとんどみんなその理屈でいくから、「そう思って自民党に移っても、うまくいかないことがけっこう多いよ」という話を僕はしたんです。
でも、本人はそういうつもりで自民に行ったから、今回の再審法改正の活動も頑張ってほしいんですけど、「自民党に入ってもダメなんだ」と、すごく悔しそうでしたね。
今回の「稲田の乱」の稲田朋美議員と、実は柴山昌彦(*3)さんという自民党議員も井出と僕の中高の先輩なので、今回、稲田さんを中心に一緒に法務省を相手に食い下がっていて……。
*2 2013年7月、刑法改正が実現され、性犯罪規定が厳罰化された。不同意性交等罪・不同意わいせつ罪が新設され、性交同意年齢が16歳に引き上げられた。また、性的な画像の盗撮は「撮影罪」として処罰されることになった。性犯罪の公訴時効期間も延長された。井出議員は「性犯罪に関する刑法改正を6年かけて実現しました。イギリスへの視察、専門家を訪ねて全国を回り、国会で何度も質問を重ねてきました」とホームページに書いている。
*3 元文部科学大臣。
亀石 そうでしたね。
D でも、これはそもそも袴田巌さんの事件(*4)をきっかけに世論が動いて法律を変える機運ができたのに、もし法務省案の通りになってしまうと、袴田さんも再審で救われることがなかったですよ。袴田さんのお姉さんのひで子さんも言ってますけど……。
このままで行ったら、検察が好きなように抗告できるし。
*4 通称「袴田事件」。1966年6月に静岡県清水市で、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で、社員だった袴田さんが同年8月に逮捕された。袴田さんは犯行を「自白」したが、初公判では否認。67年8月末、血に染まった「5点の衣類」が工場のみそタンクから見つかり、死刑判決が確定。しかし実際に血の付いた衣類をみそ漬けにする弁護側の再現実験でこの認定に疑義が生じ、再審請求したが何度も棄却された末、ようやく2014年に再審が決定され、ついに袴田さんは釈放された。しかし高裁が再審開始を取り消すなど、紆余曲折を経て23年10月に再審が開始、24年9月袴田さんに無罪判決が出た。逮捕から58年も経過していた。
亀石 そうそう、本当にそうです。
証拠は誰のものなのか

D 政府案=法務省案の、良くない点、もうひとつは、「証拠の開示」なんですね。
裁判の証拠って、検察や警察が捜査して押収したものを、検察が預かって、裁判で「こういう証拠があるから、この人がこういうことやったのは明白です」などと立証するのに使うわけですけど、弁護側も証拠を探して、「この証拠があるから、検察の主張はおかしいです」というように、裁判の行方を決める決定打というのが証拠ですよね。
亀石 そうですね。
D それなのに、検察が再審を拒むとき、証拠を提出しても、今回の最新法改正案では、「目的外の使用を禁ずる」という言い方をしているんです。
そして、これまでは、証拠の提出すら、拒んできました。
袴田さんの事件の有罪判決の決め手とされた証拠として、5点の衣類という、みそ樽に漬け込まれた衣類が証拠として提出されたんですが、これが最初は白黒写真しかなかったんです。その衣類が袴田さんの衣類で「犯行後に、みそ樽に隠したんだ」という検察のストーリーがあったんですけど、「みそ漬けされていた衣類に、こういうふうに血痕が残るのか?」と。
亀石 そうそう。「1年間以上みそに浸かっていたのに、赤い血痕が残るのか」という話ですね。すごく不自然で。
D ただ、提示された証拠写真が白黒だから、「赤かどうか」というのが分からなかったんです。
だけど、もちろん弁護団はそれをマスコミに公開して、「この5点の衣類の証拠はおかしくないですか」と主張した。それが記事になったことで、世論も「この証拠で、この検察のストーリーは成り立たないんじゃないか?」という意見がすごく広がったんですよね。
そのこと自体が袴田さんの裁判にも大きく影響して。けっきょく最高裁まで行ってしまって、最高裁で死刑判決が確定したけれど、何度も再審請求をして、そのたびに棄却されたけど、何とか再審が認められて、逆転無罪となったわけです。
決定的だったのは、その証拠で、しかも実はカラー写真があったわけですね。
亀石 そうそう。
D でも、そのカラー写真を検察が提出していなかったんです。なぜなら、カラー写真を出してしまうと、自分たちの話がおかしいことがバレるから。
亀石 検察は自分たちに都合のいい証拠だけ出して、都合の悪い証拠は全然出さず、弁護側は、検察が証拠として何を持っているかも分からない、という状態なんです。
D そう。検察がどういう証拠を持っているか分からない。
亀石 分からないですよね。だから「持っている証拠は、全部出せ」と。だって、国民の税金で集めた証拠ですから。
D その通りですね。
亀石 それは、みんなのものじゃないですか。別に「検察の所有物」ではない。だから、「全部出せ」と。「確定した死刑判決が間違いなのかどうかが問われている再審手続なんだから、持っている証拠は全部出せ」と。「間違いなのかどうかを検証するには、証拠を全部出さないと検証できないだろう」と。
だけど、そういうルールがないから、検察は証拠を出さないんですよね。
それはおかしいから、「検察が証拠を全部出さねばならないというルールに変えましょう」という議論を今やっているんですけど、検察側がものすごく抵抗しているんです。
D 「ファイルだけなら見せます」とか言ってね。
亀石 そうそう。
D でも、このファイルって実は、ファイルのナンバーだけを出すから、出されても何だか分からないんですよ。これを1個1個突き合わせないといけない、という。
検察は「いかにして証拠を見せないですませるか」ということを、すごく頑張っているわけです。
今、亀石さんが言ったことを、僕も「ノーモアえん罪アクション」のときに、告知動画か何かで言ったんです。「証拠は誰のものなのか、といったら、国民の税金を使って集めたもので、あくまで検察はそれを預かる権利をもらっているだけなんです」と。「でも、その権利は誰が与えたのかといったら、主権者である僕らですよ」と。
亀石 本当にそうです。
D 僕らが検察に、「とりあえずは捜査で集めた証拠をあなたが保管し、預かっていていいですよ」と言って預けているだけで、検察がその中からえり好みして「これと、これと、これだけを裁判に使いましょう」というようなことをしているけど、そんなことを僕らは許可してないんですよ、本当は。
証拠は捜査で広く集めていい。その権限も与えましょう。だから検察は捜査して、段ボール箱にいろいろ入れて持って帰るわけですよね。「それはやっていいよ」と。
「でも、それはあくまで、僕たち国民が、あなたたちに預けているだけだからね」と。
亀石 そうですね。
D 民主社会における裁判というのは、社会全体のための利益調停をやるためのものだから、別にタトゥー裁判であろうと、冤罪の裁判であろうと何だろうと、僕ら全体の、みんなの裁判なんですよね。
亀石 そうですね。民主主義のインフラみたいなものだと思います。
D だから、それを検察が「自分たちのものである」かのように扱っているというのは、勘違いもはなはだしいんです。今、法律で決まってないから、そういう勘違いをのほほんとできているかもしれないけど、「証拠は君らのものじゃないよ、みんなのものなんだから見せなさい」というふうに法律に明記して、変えようとしたわけですね。
亀石 そうそう。
D でも、検察が「嫌だ」と言っているんですよね。
亀石 ものすごく抵抗していますね、証拠を全部開示するということに対して。
ダースさんが言ったように、「目的外の使用禁止」ということを言っていて、「裁判の審理のため以外には使うな」と。だから、証拠をメディアに見せたりすることもできなくなる。
袴田さんの事件では、みそ漬け実験というのを支援者の方々がやったんです。本当に1年以上、衣類をみそに漬けてみて、「こんな色になるのか?」という実験を、いろんな形で、何年もかけて、何度もやっているんですよ。そういうことすら、できなくなってしまうんですよ、「目的外の使用禁止」というふうにされてしまうと。
D 「目的外使用」という言葉が曖昧なせいで、検察側から「それは目的外使用に当たります」と何に対しても言われて、いろんな活動が制限されてしまう恐れがある。
亀石 そうですね。だから、今、19個しか条文がないという話をしたんですけど、新たに法務省が主張しているような条文が整理されていくと、今できていることさえ、できなくなってしまう。だから再審法改正でなく、改悪になってしまう可能性があるんです。
92歳の袴田ひで子さんが闘い続ける理由

D 改悪ですよ。だから今、本当に袴田ひで子さんとか……。
僕は「いいかげん、ひで子さんに背負わせるのをやめろよ」と思うんです。ひで子さんのことを僕は本当に尊敬しているんですよ。もう92歳ですよ。それなのに常に現場に出てきて、マスコミ対応もして……
しかもひで子さんが今、再審法改正にあれだけ頑張っているのは、弟さんの巌さんは無罪を獲得することができたけど、次の冤罪被害に遭うかもしれない人を救うために活動しているんですよ。自分や家族のためじゃないんです。新たに冤罪被害に遭うかもしれない人たちのために、と。
だからひで子さんは、自民党の集まりとか、そういうところにも出て、しゃべって、それを法務官僚とかも聞いているわけですよ。「彼らには心がないのか?」と僕は思います。
亀石 人としての心がね。
D 本当に思うんですよ。だって92歳の方が、冤罪の被害者の親族としてずっと、48年間も活動してきて、ようやく無罪を勝ち取ったけど、「いや、まだ、次の袴田巌を生まないために、このことは変えなきゃいけない」と頑張っていらっしゃる。こんなすばらしいことはない。でも、ひで子さんにやらせ過ぎです。
亀石 本当に。いろんなことを担わせ過ぎちゃって……。
D そんなひで子さんを前にして検察は、今度は袴田巌さんすらも救われないような法律を作ろうとしているわけですよ。「こんなことが、あり得るのか」と思います。道徳とか倫理って、学校で教えているはずなんですけど……。
亀石 確かにね。
D だから稲田さんたちが、法制審議会で声を張り上げるのも分かるんですよ。
亀石 そうですね。
D 稲田さんの場合、福井県の選出ですから、福井事件(*5)という冤罪事件を、まさに我が事のように感じて関わっている、というのもあると思うし。
*5 1986年3月19日夜、福井市の市営住宅で留守番をしていた女子中学生(当時15歳)が殺された。事件の約1年後、当時21歳だった前川彰司さんが逮捕され、被害者とは一面識もない、と容疑を否認したが起訴され、一審判決では無罪だったものの、95年の二審では懲役7年の逆転有罪判決を出した。弁護側は上告したが最高裁は97年に上告を棄却し、有罪が確定。前川さんは拘留期間を合わせると合計9年近く自由を奪われていたが2003年に出所。翌2004年に再審請求し、名古屋高裁・金沢支部が再審開始決定をしたものの、検察の異議申し立てがあり、再審開始決定は取り消された。その後、また再審請求したが棄却。それから紆余曲折の末、ようやく2011年に再審が開始され、名古屋高裁・金沢支部の再審判決で無罪が確定したのは2025年、逮捕から38年後のことだった。この事件をモデルにした話は、NHKの夜ドラマ『テミスの不確かな法廷』(2026年1月~3月放送、松山ケンイチ主演)でも描かれた。
亀石 そうですね。だから、法務省=検察で、「再審無罪を妨げてきた側」が主導権を持っていってしまって、今、再審法をどうにかしようとしている。
クラブが風営法違反で摘発された訴訟のときも、まさにクラブを摘発する警察のほう、警察庁が自分らに主導権を持っていって。こちらの願いは「クラブを風営法の規制対象にするのをやめろ」ということだったんですけど、けっきょく、「風俗営業」からは外したけれど、「特定遊興飲食店営業」という新しいカテゴリーを作って、その下での規制を続けているんですよ。だから、法改正はされたけれども、クラブ側からすれば、100点満点の法改正ではなかったんです。
D もちろん。
亀石 警察が主導権を握って、「警察にとっていい法律案」を通してしまったんです。
だから私は、再審法の改正が今国会で議論されているときに、まさにクラブの風営法違反訴訟のときのことを思い出して。
あの訴訟は大阪地裁でも、大阪高裁でも無罪になって、最高裁で無罪が確定したんですけど、私はその刑事裁判だけに関わっていたので、ダースさんたちが東京で法改正のための活動をされていたことは、大阪から見ていただけだったんですよね。
あのときの私は、法改正がどういうふうにされるか、知らなかったんです。超党派の議員連盟ができて、その後どうなっていくのか、とか、全然知らなくて。
あのときのことが、今やっと分かるというか。
D なるほど。
亀石 だから、本当に法改正というのは、すごく厳しい闘いなんだな、と思います。
国旗損壊罪のおかしさ

D 再審法と同時に、今、国旗損壊罪法案(*6)を自民党など4党が提出しましたよね。あれを、ルール作りの話として小学生に言っても、たぶん「おかしい」って言うと思います。
罰則の対象は、国旗を「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法・状態」で「公然と損壊、除去または汚損する行為」と言うんですけどね。
それから、「映画など芸術的表現については『社会通念』に照らして対象か否かを判断する」と言うんですけど、「社会通念」って、さっき言った「空気」(第1回参照)で、正体不明のものですよね。
*6 自民党、日本維新の会、国民民主党、参政党の4党が6月16日、国旗損壊罪法案を衆院に共同提出。同法案が成立すれば、日の丸を損壊・汚損する行為などが、場合によっては「犯罪」となり、2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金という「刑罰」を科される可能性がある。
亀石 そうですね。
D 「人を不快にさせる」という文言を法律に入れてしまうのも問題です。
今このイベントに30~40人の人が集まっていますけど、ひとりひとり「不快になるポイント」は違うと思うんですよ。「全員が不快になるポイントというのはあるんですか?」と尋ねたいです。
あるいは「白地に赤い丸がぽーんとある、あの、日の丸のバランスが気持ち悪い」と思う人も、中にはいるかもしれない。
亀石 確かに。
D でも別に、内心ではどう思ってもいいわけですよ。なぜなら、憲法では「内心の自由」が保障されているから、何を不快に思おうと自由なんです。もちろん、それを表立って言ったりすれば、モメたりする場合もあるから、ケース・バイ・ケースなんだけど、心の中でなら、何を不快に思ってもいいんです。逆に何かを不快に思わなくてもいいんです。
だから、この法案の条文自体が、憲法に抵触していると僕は思います。
それと、法律を作るときには「立法事実」、つまり、「法律を作る理由」が必要なんです。
小学生たちと「ルールを決める」という話をしたときに、「何でこのルールがあるのか?」という議論をしましたけど、「そのルールを作る必要がある」ということ、「必要性」というものが最初にないと、ルールを作ってはいけないんです。無意味に人を規制し、取り締まることになってしまうから。
僕は今、49歳ですけども、まわりで国旗を損壊している人をまだ一度も見たことがないんですよ。
亀石 私も見たことがないです。(笑)
ヘイトスピーチをしている人が国旗を振っていたら国旗損壊罪になるのでは?
D 僕にとって「国旗損壊をしているな」と思うのは、ヘイトスピーチをしている人がアイコンに国旗を入れていたりすることです。それは「国旗へのリスペクトを欠く行為」であると思うし、街頭演説とかでヘイトスピーチをしている人が国旗を振っていたりすると、それは僕にとっては「著しく国旗を損壊している行為」なんです。「それにも国旗損壊罪が当てはまるんですか?」と法案を作った人たちに聞きたいです。
だって、川崎などにはヘイトスピーチ禁止条例がありますよね。「ヘイトスピーチというのはダメだ」という社会通念は、今、できつつあります。だから「社会通念上」ダメな、ヘイトスピーチという行為をやっている際に、国旗を使っていたら、それは「国旗を損壊している」という解釈が成り立つんじゃないでしょうか。
この議論は、この国旗損壊罪法案の議論と一緒に、ぜひ、してほしいですね。「お子さまランチに立ててある日の丸を捨てたら国旗損壊罪になるか」なんていう話を国会議員たちがしていましたが、そんな話はどうでもいいから。
「ヘイトスピーチや差別発言をしているときに国旗を持っていたら刑事罰です」となったら、もしかすると、いい方向に行くかもしれないです(笑)。
亀石 物理的に壊してなくても、毀損していますよね。国旗の価値をね。
D 毀損しているというか、「社会通念上」「人を著しく不快に」させていますよね。
亀石 確かに。
D 「ヘイトスピーチがなぜダメか」と言うと、ヘイトスピーチを向けられた側を「傷つけている」からなんです。「不快にさせる」どころじゃないんです。
亀石 そうですね。
D ということを、ヘイトスピーチに関する議論と同時にグッと進めていけば、もしかしたら自民党の立法意図と変わってしまう可能性がありますが、「国旗損壊罪によって日本のヘイトスピーチの現場から国旗が消える」という面白いことになるかもしれない。
このロジックは、特に国会で議論するときに、野党の質問などで、具体的にこういう話をしてほしいと思います。
亀石 確かに。私たちが一番日の丸を見るのって、そういう場面ですからね。
D そうなんです。残念ながら、「日の丸と言われて今思いつくのは、そっち」みたいなところがあるので。
だから、「そういうときに使っちゃダメだよ」って言ったら、「ふざけるな!」というムードがもしかしたら、そっち側から起こる可能性があるかもしれませんよね。
亀石 なるほど。
D 法律のことを考えるのって、実はけっこう頭を使って面白いところもある。仕事だと大変だと思いますけどね。
亀石 そういうふうにクリエイティブに考えたことがあまりなかったので、すごく面白かったです。(了)
プロフィール

(かめいし みちこ)
弁護士。2009年大阪弁護士会に登録。刑事事件を中心に研鑽を積み、ダンス規制法の無罪判決(2016年)、令状なし GPS捜査の違法判決(2017年)、タトゥー事件無罪判決(2020年)をいずれも最高裁で勝ち取る。公共訴訟を支える専門家集団『LEDGE』代表理事。共著に『刑事弁護人』(講談社現代新書)。2026年5月、共著『はじめての公共訴訟 社会を動かす、私たちのツール』(集英社新書)を刊行。

(DARTHREIDER)
ラッパー、音楽家、映画監督。1977年、パリ生まれ。幼少期をロンドンで過ごす。東京大学中退後、2000年にMICADELICのメンバーとしてメジャーデビュー。クラブ営業を規制する風営法の見直しを求める「Let's DANCE」運動に参加し、クラブNOON事件をめぐっては音楽・クラブカルチャーの立場から発信を続け、世論喚起に取り組んだ。プチ鹿島との共同監督作『劇場版 センキョナンデス』等も手がける。著書に『イル・コミュニケーション―余命5年のラッパーが病気を哲学する―』(ライフサイエンス出版)。他。2026年8月20日に新刊『セルフ透析はじめました』(KADAKAWA)刊行予定。
亀石倫子×ダースレイダー







平尾剛


森野咲