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関東芸人はなぜM-1で勝てないのか?【第2回】

ナイツ 塙宣之インタビュー
ナイツ 塙宣之

M-1が始まった年にコンビ結成。08年には優勝まであと一歩というところで苦杯をなめるも、そのタイトルに挑み続けた「裏・M-1の申し子」、ナイツ。ネタを書く塙は、M-1特有の性質に加え、関東芸人にありがちな、ある「癖」が優勝を難しくしているという。芸人にとって、M-1王者とは何を意味するのか。これから優勝できそうな関東芸人は、誰なのか?

関東芸人の悪い癖

──去年、M-1で優勝した結成15年目のとろサーモンなんかも、もうベテラン漫才師のようでした。

 めちゃめちゃうまいですよね。2015年にM-1が5年振りに復活し、参加資格を従来の結成10年以内から結成15年以内に延ばしたことによって、経験値の高いやつがごろごろいるようになった。競馬で言えば、3歳クラシックから、古馬のレースになってしまったようなもんです。だから、昔ほど強い武器を持っていても通用しなくなっちゃいましたね。それ以上に経験値がものを言うようになってきてしまった。新しいことをやらなくてもいけるぞ、と。とろサーモンが優勝を決めた「石焼き芋」という、一人が石焼き芋屋さんに扮するネタだって、同じネタで何度も予選落ちしてるんですよ。でも15年目の「石焼き芋」ならいけるということは、単純にうまくなっただけじゃないですか。そういう大会になりつつある。芸歴10年目以内の大会だったら、去年なんかは、ジャルジャルのネタとかがもっと評価されてたと思いますよ。新しいという意味では、いちばん目立ってましたから。まだ全国的な知名度は高くありませんが、ワタナベにも四千頭身とか、おもしろい3人組がいるんです。下手ですよ。でも、下手だけど何かおもしろくなりそうな雰囲気はある。M-1もそういう芸人を評価する大会にできないのかなと思うんですけどね。

──確かに復活してからのM―1は、存在意義が大きく変わった気がします。

 M-1がいったん終了したことを受け、11年から14年までフジテレビ系列が放送していた漫才コンテスト『THE MANZAI』は、芸歴の制限はなかったじゃないですか。だから『THE MANZAI』が漫才師の力量自体を評価していたというのはわかるんです。でもM-1が復活したことで『THE MANZAI』がなくなり、そのM-1が芸歴15年目以内と延長措置をとったことで、結局は、M-1が『THE MANZAI』に代わってうまさを競うコンテストになってしまった感がある。復活してからで言うと、復活1年目の2015年に優勝したトレンディエンジェルがもっともM-1らしい王者だったと思うんです。ネタも新鮮だったし、若手らしい勢いもあった。漫才でハゲネタをあそこまで多投してくるコンビはいませんでしたから。あれが逆に結成15年目とかで、妙にうまかったりすると、かえって勢いが削がれるというか、優勝できなかったんじゃないですかね。

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プロフィール

ナイツ 塙宣之

芸人。1978年、千葉県生まれ。漫才協会副会長。2001年、お笑いコンビ「ナイツ」を土屋伸之と結成。2008年度以降、3年連続でM-1グランプリ決勝に進出する。漫才新人大賞大賞、お笑いホープ大賞大賞、NHK新人演芸大賞大賞、第9回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、浅草芸能大賞新人賞、第10回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、第68回文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、浅草芸能大賞奨励賞、第67回芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞など、受賞多数。集英社新書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』、8/9発売!

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関東芸人はなぜM-1で勝てないのか?【第2回】