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関東芸人はなぜM-1で勝てないのか?【第2回】

ナイツ 塙宣之インタビュー

ナイツ 塙宣之
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ネタを信頼するのは古典落語と同じ

──今、四千頭身の名前が出ましたが、関東芸人で、これからM-1で優勝できそうな芸人はいますか。

 いや、俺、ぜんぜん今の若手を見てないんだわ。さっぱりわかんない。いないんじゃないですか。まあ、同じ事務所ということで言えば、三四郎に期待してますけど。ただね、三四郎も含め関東の中堅どころで、そこそこ人気もあるぞという芸人に共通した弱点があるんです。若い人が集まりがちなライブハウスとかでやることが多いせいなんでしょうね、「テレビに出るようになって、おまえ調子にのってんな」とか、同じ事務所に所属している違うコンビの名前を出して「だから事務所は〇〇の方を推してるんだよ」とか。それって全部内輪ウケのワードなんです。けれども、ライブとか営業では異常なほどウケるんです。だから癖になる。三四郎の小宮(浩信)は特にそういう癖がついちゃってて、すぐ「何で笑わないんですか」みたいなことを言っちゃう。

──関西でいうところの「客をいらう(いじる)」みたいなことですね。

 M―1の舞台で同じことをやったとして、もしかしたらウケるかもしれないですよ。でも、それはネタの中でのことではないので、ウケても弱い。本ネタがつまらないと、そのつまらなさが一層浮き彫りになるだけなんです。アンタッチャブルとかサンドウィッチマンは、そういうワードは使わずに本筋のところでお客さんを爆発させてたじゃないですか。そこって、けっこうポイントなんです。僕らは寄席にも出ているので、落語家さんと接する機会も多いんです。落語を聴いているとよくわかるのですが、ウケてる人ほど余計なことは言わないんです。古くから受け継がれてきた古典落語は話がしっかりしてますからね。ちゃんと稽古を積んできた人は、ネタを信頼している。だから、少々笑いが起きないなと思っても、その時間をじっと待てるんです。

──漫才も同じなわけですね。ネタに自信があれば余計なことは言わない、と。

 M-1の舞台は、この1年間、ネタを本当にちゃんと作ってきたかどうかが如実に表れる。三四郎は、そういうところを脱却できないと無理でしょうね。本筋のネタをもうちょっと面白くしないと。ウエストランドとかも人気がありますけど、その傾向があるんだよな。関東のライブハウスでは、2軍ではホームランを打ちまくってるけど、1軍にくると通用しないバッターみたいのがすごく多い。1軍のお客さんは、そんな甘いボールは投げてくれないよ、ってことなんです。やっぱり本ネタで笑わせないと、一軍で通用する技術は身につかない。

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プロフィール

ナイツ 塙宣之

芸人。1978年、千葉県生まれ。漫才協会副会長。2001年、お笑いコンビ「ナイツ」を土屋伸之と結成。2008年度以降、3年連続でM-1グランプリ決勝に進出する。漫才新人大賞大賞、お笑いホープ大賞大賞、NHK新人演芸大賞大賞、第9回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、浅草芸能大賞新人賞、第10回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、第68回文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、浅草芸能大賞奨励賞、第67回芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞など、受賞多数。集英社新書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』、8/9発売!

 
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関東芸人はなぜM-1で勝てないのか?【第2回】