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関東芸人はなぜM-1で勝てないのか?【第2回】

ナイツ 塙宣之インタビュー
ナイツ 塙宣之

M-1に必要なのは新しさか、うまさか

──2年連続で決勝に進出しているカミナリはどうですか。いわゆる「どつき漫才」で一躍、人気コンビになりましたが。

 カミナリはもう笑いのパターンをみんながわかっちゃってるから。これ以上はないんじゃないですかね。4分が長く感じますもんね。ボケとツッコミを入れ替えるとか、いっさいどつかないとか、思い切ったことをすれば話は別ですけど。でもM―1のために、そこまでする必要があるのかという気もしますし。僕の中で「うねり」って呼んでいる現象があるんです。要するに、客席が爆発する感じです。M―1は、うねるかうねらないかなんです。カミナリは二度目からは、どうしても見たことあるぞ、ってなっちゃうじゃないですか。パターンを持ってるコンビは、決勝初進出のときに優勝しないと無理なんですよ。

僕らも、そうですよね。「Yahoo!」を「ヤホー」と言ったりする言い間違いという一つのパターンがある。08年、初めて決勝に出たときに、審査員の松本(人志)さんはすごく評価してくれて。でも09年は低かった。同じだね、って思われたんだと思います。先ほどM-1がうまさを競う大会になりつつあるという話をしましたが、松本さんだけはずっとぶれてない。M-1の定義は、新ネタ発表会だと思ってるんですよ。新しいことをやらないと意味がないと。だから、他の審査員と1年ぐらい評価のズレがあるんです。06年に優勝したチュートリアルのネタも、05年の時点で、すでに松本さんはものすごく高く評価していた。1年経って、そこにうまさが出てくると他の審査員も追随するようになる。僕らも09年は、松本さんの評価は下がりましたけど、紳助さんはうまくなったと前年より高得点だったんです。紳助さんは松本さんとは対照的なところがあって、昔からM-1は漫才のうまさを評価する大会だと思ってるところがあったんです。

 

──今も現役の漫才師ということで言えば、東の横綱は爆笑問題だと思うのですが、爆笑問題が若かった頃にM-1があったとして、勝てていたと思いますか。

 難しかったでしょうね。爆笑問題も時事ネタ漫才というパターンを持っているので、優勝するなら一発目だと思うんですけど、時事ネタはどうしても説明する時間が必要なので4分では短いと思うんです。それよりも、僕は海砂利水魚(旧コンビ名)時代のくりぃむしちゅーの方が可能性はあったと思いますね。すっげえ面白くて、僕も何回もビデオで観てましたから。有田さんの脳みそは、未だに「笑い脳」ですよ。まだまだやろうと思えば漫才できると思うんだけどなぁ。

(取材・構成 中村計)

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プロフィール

ナイツ 塙宣之

芸人。1978年、千葉県生まれ。漫才協会副会長。2001年、お笑いコンビ「ナイツ」を土屋伸之と結成。2008年度以降、3年連続でM-1グランプリ決勝に進出する。漫才新人大賞大賞、お笑いホープ大賞大賞、NHK新人演芸大賞大賞、第9回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、浅草芸能大賞新人賞、第10回ビートたけしのエンターテイメント賞 日本芸能大賞、第68回文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞、浅草芸能大賞奨励賞、第67回芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞など、受賞多数。集英社新書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』、8/9発売!

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