著者インタビュー

選挙報道はもっと面白くできる! “SAMEJIMA TIMES”の挑戦

『朝日新聞政治部』著者・鮫島浩氏インタビュー【後編】
鮫島浩

れいわ新撰組と山本太郎を支持する理由

――メディアに限らず、「格差と貧困」の問題に目を向ける政党や政治家は少ない気がします。

鮫島 立憲民主党なんかもエリートの集団だからね。立憲民主党の人気が無いのは、エリートだと思われているからですよ。しょせん体制側の「エスタブリッシュメント」だろうと。

でも、本当は苦しい立場にある国民に寄り添うのが野党の役目でしょう。左右対決をやっているうちは楽なんですよ。憲法が云々とかね。確かに憲法の議論も大事だけど、普通の人はそんなに興味が無いからさ。もっと自分の暮らしを何とかしてよと思っているはずです。

いま自民党と野党の大半が繰り広げているのは、ただの空中戦に過ぎません。単なるエスタブリッシュメント同士の、右と左のプロレスみたいなものです。

そんなことより、生まれながらにしてこんなに差があるのっておかしいでしょと。ただ生活していくだけなのに、こんなにお金がかかっちゃって生きていけない。本当に追い込まれてしまっている。日々そういう矛盾を感じて生きている人たちが、エスタブリッシュメント同士の左右イデオロギーの喧嘩を見せられたってシラケるのは当然で。これじゃあ、いつまで経っても投票率50%のままですよ。

経済が落ち込んだのに社会保障が整備されていないから、不幸な人はどんどん不幸になる。一方で、恵まれた環境に生まれた人はそれに思いが至らない。そしてそういう人たちが政治家になり官僚になり記者になっていく。最悪だよね。

どんな家に生まれたって堂々と生きていける。そういう社会を実現することこそが本来は政治の役目のはずなのに。

――その観点で見ると、れいわ新撰組は目線が他と違うと感じました。「消費税廃止」というあまりにも大胆な公約を掲げていることでも注目を集めています。

鮫島 党首の山本太郎がすごくしっかりしていますよね。象徴的なのが、(ふな)()靖彦(やすひこ)()さんや木村英子さん、天畠(てんばた)大輔さんを候補者に立てたことです。色々と文句を言う人もいるけど、僕は立派だと思っています。あれも一つのメッセージであり、シンボルなんだよね。まさしく「誰一人見捨てない」という理念を形にして見せているわけですよ。

どんな人も見捨てないというのは、言うのは簡単だけど実際には大変です。それを正々堂々と掲げて実行に移すのは素晴らしいと思いますよ。僕はずっと政治記者をやってきたけど、そんな政党はちょっと記憶にありません。

いまのような暗い時代には、「どんなことがあっても安心していこう」「あなたのことは絶対に見捨てないよ」というメッセージこそ、政治が最も出すべきものでしょう。この最も大事なメッセージを、一般の人に響く言葉できちんと表現できているのはれいわ新撰組です。

まだまだ未熟な政党です。僕から見るとわかっていないところも多いなあと感じるし、弱い点は沢山あるんだけれども、熱意よし、意気込みよしと思っていて。一般の人たちの立場に寄り添い、従来の政治を変えようとしている。異質な政治家・政党が出てきたなと感じていますし、野党の中では「化ける」可能性は山本太郎が一番高い気がします。

ボランティアとか、エネルギーがすごいですよ。利権も無いのに、あんなに熱量のあるボランティア団体は見たことがない。

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プロフィール

鮫島浩

(さめじま ひろし)

ジャーナリスト。1971年生まれ。京都大学法学部卒業。佐藤幸治ゼミで憲法を学ぶ。1994年に朝日新聞社へ入社。つくば、水戸、浦和の各支局を経て、1999年から政治部に所属。菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら与野党政治家を幅広く担当し、2010年に39歳で政治部次長(デスク)に。2012年に調査報道に専従する特別報道部のデスクとなり、翌年「手抜き除染」報道で新聞協会賞を受賞。2014年に福島原発事故をめぐる「吉田調書」報道で解任される。2021年に退社してウェブメディア「SAMEJIMA TIMES」を創刊し、連日記事を無料公開している。

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