ガザの声を聴け! 第41回

2015年5月「どうしていいかわからない」

清田明宏
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ヤルムーク訪問の当日の朝も治安状況の確認、許可書の確認、関係各位への連絡等、慌ただしい。ヤルダはヤルムークから近いので治安上の不安は絶えずあり、我々職員は皆、防弾チョッキをつけ、ヘルメットをかぶる。防弾チョッキは非常に重い。10キロはある。私も着用したが、重みが肩にずっしりとかかり、汗もかく。着用自体が重労働だった。

 

下の写真はヤルダに出発する朝の緊急医療団だ。左から薬剤師、助産師、看護師、運転手、医師、歯科助手、歯科医、そして医師だ。

 

 

午前9時過ぎにシリア事務所を出発した。ダマスカス市内を通り、ヤルダに向かう。ヤルムークやヤルダはダマスカス市内の南側にある。ヤルダに着くまで30分以上かかった。

 

ヤルダにはヤルムークの人のための避難所がある。そこが食料支援と医療活動の拠点だ。避難所はもともと学校だったそうだが、その中の部屋を2つ借り、臨時のクリニックを開く。血圧計等の簡単な医療機器を運び込み、薬も持ち込む。我々の訪問を聞いた人々が続々と集まってくる。クリニックの部屋の前にはすでに長蛇の列ができている。

 

2つ借りた部屋の一つは子供の健診・予防接種用に使われた。看護師が予防接種の準備をし、子供を連れた親子(多くは母子)を次々に診察し、予防接種を行う。栄養失調の簡単な検査もする。通常はそこで終わりだが、栄養失調や他の問題がある子供は隣の部屋の医師に診てもらう。

 

別の部屋では医師と薬剤師が次から次に来る患者の診察・治療にあたる。気管支炎、風邪、扁桃腺炎等の感染症の患者さんが多い。肝炎で目に黄疸が出ている子供もいる。そして糖尿病等の生活習慣病の患者も少なくない。

 

2015年3月、UNRWA「ウンルワ」は11回の移動診療を行った。その時の患者の疾患別の統計は以下の通りだ。

 

疾病分類

患者数

感染症

1170

50%

慢性疾患・長期疾患(生活習慣病等)

605

26%

母子保健(妊婦等)

266

11%

歯科

166

7%

傷害・外傷等

65

3%

その他

73

3%

合計

2345

100%

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ガザの声を聴け!

1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。

プロフィール

清田明宏
1961年福岡県生まれ。国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA=ウンルワ)の保健局長で医師。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。世界保健機関(WHO)で約15年間、中東など22カ国の結核やエイズ対策に携わった。2010年から現職。中東の結核対策では、患者の服薬を直接確認する療法「DOTS」を導入し、高い治癒率を達成。その功績が認められ、第18回秩父宮妃記念結核予防国際協力功労賞を受賞した。
 
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2015年5月「どうしていいかわからない」

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