平成消しずみクラブ 最終回

君は誰かね

大竹まこと
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 今週、もう一冊本が届いた。ラジオのリスナーである祥伝社の女性からで、本屋大賞の候補にもなった小野寺史宜『ひと』。とても図々しいお願いであるが、良い本なので是非読んでほしい、ときれいな字の添え文があった。
十七歳の高校生の時に父が車の自損事故(猫をよけようとして)で亡くなり、大学に入学したら今度は母親も亡くなる。
 一人の若者がたった一人で生きていく話である。
 私は一夜で読んでしまった。
 恥ずかしい話を思い出した。十年以上前に私は本を書いた。今読むと赤面する情けない文章がページをめくるたびに飛び込んでくる。あろうことか、その本を小説家の小林信彦さんにだけ送ってしまった。
「厚かましくも、本を出しました。失礼を覚悟でお送りしました。もしイヤならそのまま捨ててくださって結構です」
 のちに、小林信彦さんは中日新聞のエッセイで「近頃のタレントが書いた本」として、小沢昭一さんの御本と一緒に紹介してくださった。もちろんメインは小沢さんの本で、私のは数行であった。
 私は嬉しくて、自宅の六畳間で踊った。
 祥伝社の女性が送ってくださった小野寺史宜さんの『ひと』はとても面白い。だから、私もラジオで紹介したいと思う。

 すまん。若者よ。君たちに伝える言葉をこの年寄りは持っていなかった。
 ぐだぐだと回り道を、それも迷いながら生きてきた男の駄文である。
 こんなものは読まずに、女性(男性)でも口説いていたほうがよかろう。
 諸君、さらばじゃ。ありがとう。

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 第14回
平成消しずみクラブ

連載では、シティボーイズのお話しはもちろん、現在も交流のある風間杜夫さんとの若き日々のエピソードなども。

プロフィール

大竹まこと

おおたけ・まこと 1949年東京都生まれ。東京大学教育学部附属中学校・高等学校卒業。1979年、友人だった斉木しげる、きたろうとともに『シティボーイズ』結成。不条理コントで東京のお笑いニューウェーブを牽引。現在、ラジオ『大竹まことゴールデンラジオ!』、テレビ『ビートたけしのTVタックル』他に出演。著書に『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』等。

 
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