調節池工事で「善福寺川緑地は壊滅的状況に」
善福寺川緑地は東京都心部では数少ない、驚くほど豊かな緑が残る「都市の森」である。私もはじめて訪ねた時は、こんなに素晴らしい緑地があったかと感嘆した。善福寺川上流地下調節池の最初の建設工事が行われるロケット公園は、大きなプラタナスの木が何本も立ち並び、その木の下で子どもたちが活発に遊ぶ、善福寺川緑地を象徴する場所だ。
調節池の建設によって、このエリアの工事地に生育する高木91本の内42本が伐採される。また、残る49本は移植だが、移植時に木を枯らさないための事前準備の「根回し」をする木は1本しかなく、残る48本は根回しせず、そのまま掘り起こして移植するという。現地を見て回った千葉大学名誉教授の藤井英二郎氏は「移植されても衰弱するか枯死するかで、緑地は壊滅的状況になり、その影響は計り知れません」と指摘している。

台湾は1000万本植樹する「アーバン・フォレスト」戦略を発表
このように、公園や緑地の樹木伐採が進む日本と対象的に、世界の都市では木を植えて増やす取り組みが活発に行われている。
2026年4月30日、台湾の頼清徳(ライ・チントー)総統は、1,000万本以上の植樹を行う「緑蔭倍増戦略」を打ち出した。緑地の政策的位置づけを格上げして、電力や水道と同等に重要な“国家インフラ”として扱うという。「木々が森に成長するには時間がかかりますが、私たちが植える一本一本の木、管理する一本一本の川は、単なる景観整備以上の意味を持っています。
それらをしっかりと保護し、的確に管理していく限り、私たちが今日行うあらゆる努力は、明日、台湾にとって最も経済的かつ直接的な気候変動対策となるでしょう」と頼総統は述べた。
台湾は公園や街路樹、民有地の樹木を都市の緑のネットワーク=「アーバン・フォレスト(都市の森)」として捉え、植樹を進める。このアーバン・フォレスト戦略によって、市民が徒歩6分以内に木陰のある緑地にアクセスできる都市を目指すという。

木陰が減る日本と対照的に世界の都市では増加
2026年5月24日の日本経済新聞は一面で「消える⽊陰、世界と逆⾏」という見出しで、日本と世界の木陰の状況を比較した記事を掲載。この記事はSNSでまたたくまに拡散され、日経新聞の公式X投稿は1,200万回以上見られ、2万以上のいいね!がつけられている(5月27日時点)。
記事によると東京23区の木陰の比率=樹冠被覆率は、2013年の9.2%から22年は7.3%に低下したのに対して、ニューヨークは22.2%(17年)から23.4%(21年)に増加、パリも14%(15年)から17.6%(25年)に増加、上海やシドニーでも増加するなど、世界の主要都市はいずれも木を植えて、“緑の日傘”である木陰を増やしている。各地で樹木を伐り、木陰を減らしている日本は、明らかに世界の潮流に反しているのだ。いったいなぜこのような状況に陥っているのか?
この連載では、樹木を減らす日本と増やす世界の現場を取材し、なぜ世界の都市は木を植えて「都市の森」を増やすのか。なぜ日本は世界に逆行して「都市の森」を減らしているのか、ということを考えていきたい。
プロフィール

(おおさわ さとる)
テレビ東京で「WBS(ワールド・ビジネス・サテライト)」など報道番組の記者・ディレクターを担当。現在はジャーナリストとして活動。明治神宮外苑の再開発に近隣住民として反対し、新宿区に対する樹木伐採許可取り下げ訴訟の原告団長を務める。X(旧Twitter)フォロワー3.9万人「ミド建築・都市観測所」(https://x.com/Mid_observatory)を運営。早稲田大学第二文学部卒、京都大学公共政策大学院卒。1983年生まれ。
大澤暁





樋口恭介×中路隼輔

綿野恵太×西村章

西村章