世界の都市はなぜ木を植えるのか~「都市の森」減らす日本 増やす世界~ 第1回

日経新聞の記事はバズったが、“緑の日傘”減少は止まらない!

大澤暁

世界の都市は木を植えて、樹木を増やしているのに対して、日本は逆に、いたるところで木を伐って減らしている。「その理由はなぜだろう?」ということを現地の取材から探る連載の第1回。まずは、直近の出来事をふりかえってみよう。

「神宮外苑」樹齢百年ヒマラヤスギの伐採

 2026年5月19日、東京・新宿区。ふだんは静かな明治神宮外苑の杜(もり)に、甲高い機械の音が響きわたっていた。キュイーンと鋭い音があがるたびに、野鳥たちがバサバサと羽ばたいて、木々の梢から飛び立っていった。

 私は、3mほどの高さの白いフェンスの向こうで行われている工事を撮影しようと、踏み台に乗り、カメラを取り付けた三脚を高く空にかかげた。まだ5月だというのに真夏のような暑さで、日差しがじりじりと肌を焼いた。

 しばらく撮影すると、私は空にかかげた三脚を下ろし、カメラのモニターで撮影内容を確認した。高い工事フェンスの向こう側は直接目で見ることができないので、カメラをつき出して、あてずっぽうに勘を頼りに撮影するしかないのだ。

 幸いにもカメラは白いフェンスの向こう側の工事の様子を正確に記録していた。ちゃんと撮れている、と私は安堵するとともに、モニターに映し出された光景を見て、絶望的な気持ちになった。それは背筋が凍り付くような映像だった。青葉の繁った枝や太い木の幹が切断され、地面に打ち捨てられた中、一本のひときわ大きな樹木を作業員がチェーンソーで伐り倒そうとしていた。今からちょうど百年前――1926年の神宮外苑の創建時に植えられたヒマラヤスギだった。

伐採される樹齢百年のヒマラヤスギ

会員制テニスクラブ建設のために樹木を伐る

 神宮外苑再開発に伴う2度目の大規模な樹木伐採である、聖徳記念絵画館前の木々の伐採が判明したのは、4月末のことだった。新宿区に対する情報開示請求で、3月31日付で新宿区がこのヒマラヤスギを含む69本の中高木の伐採許可を出していたことがわかった。

 5月7日から絵画館前のエリアを封鎖して、樹木伐採工事をはじめるという標識が5月1日に出された。私たち神宮外苑再開発見直しを求めるグループは、急遽、伐採される樹木の記録会を開くことにした。ゴールデンウィーク中にも関わらず30名ほど集まった。

 伐採される予定の樹木の配置図を見ながら、伐採される一本一本の木を確認していった。私たちは伐られる木の大きさに驚いた。ヒマラヤスギだけではなく、ユリノキ、シラカシ、ケヤキ、サクラ、どれもこれも立派な大木ばかりだった。

「本当にこの木を伐ってしまうのですか?」という声が参加者からあいついだ。生育状況にも問題のない、これだけの大木を伐ってしまうとは、にわかには信じがたかった。

 しかも、木々を伐採して何をするかというと、プライベートな会員制テニスクラブの施設を建設するというのだ。神宮外苑のイチョウ並木と絵画館の間にテニスコートとクラブハウスをつくる予定だという。そのために、大正時代に国民が自らの資金を集めて土地を買い、自らの手で植えた木を伐採してしまうのだ。

伐採前のヒマラヤスギ(前)とシラカシ(左後ろ)
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プロフィール

大澤暁

(おおさわ さとる)

テレビ東京で「WBS(ワールド・ビジネス・サテライト)」など報道番組の記者・ディレクターを担当。現在はジャーナリストとして活動。明治神宮外苑の再開発に近隣住民として反対し、新宿区に対する樹木伐採許可取り下げ訴訟の原告団長を務める。X(旧Twitter)フォロワー3.9万人「ミド建築・都市観測所」(https://x.com/Mid_observatory)を運営。早稲田大学第二文学部卒、京都大学公共政策大学院卒。1983年生まれ。

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