世界の都市はなぜ木を植えるのか~「都市の森」減らす日本 増やす世界~ 第8回

中国の都市が日本より“緑豊か”になった理由

大澤暁

「緑化」を超えて「森
もり
化」する首都・北京

 なぜ中国は700億本もの大量の木を植えようというのだろうか? ダボス会議で語られた「気候変動と戦う」ということはもちろんあるが、それは表向きの理由でもっと切実な「真の狙い」があるのだ。

 その真の狙いがよく見えてくるのが中国の首都・北京だ。

 北京市は「花园城市(花園都市)」をスローガンに掲げて急速に緑化を進めており、2023年までの10年間で1億300万本以上もの木が植えられたという。東京23区の面積(627㎢)の倍以上にあたる約1460㎢の緑地が新たに造成され、森林被覆率は38.6%から44.9%に上昇した(北京市HP)。北京市の面積は約16410㎢で東京都(約2200㎢)の約8倍と広大とはいえ、市域の4割以上が森林で覆われているというのは驚異的である。

 実際に北京を訪れてみると、鬱蒼と茂った街路樹が延々と続いていることに驚いた。どの木もよく手入れされていて、鮮やかな緑色をした葉を豊かに茂らせていた。

 また、北京でも上海と同じように多くの緑道が整備されていた。ウォーキングやランニングをすると、とても気持ち良い。世界遺産にもなっている永定門や天壇公園などをつなぐ環二環路都市緑道(全長80㎞、2024年全線開通)は、木々の間を散歩しながら古都・北京の歴史文化を堪能できてお勧めである。

道路沿いに延々と連なる北京市内の街路樹

 そして北京市は「都市森林」「微小緑地(マイクロ緑地)」という森林・緑地公園の整備にも力を入れている。これはビルやマンションが立ち並ぶ都心部で、1つの樹種ではなく、大小さまざまな樹種・植物種が植えられた“人工の森”をつくるというものだ。北京市では9割以上の住民が500m以内に公園や緑地のある場所に暮らせるという目標を掲げ、計画的に整備している。

 私は都市森林のモデルとして2019年に整備された「広陽谷都市森林公園」を訪れた。天安門広場などの中心市街地近くにある公園だが、都心部に突然、豊かに木々が生い茂った樹林地が現れるのには驚いた。その人工の森はよくつくられており、自然にできた森だと言われても信じてしまいそうな出来栄えだ。

 森の中で子供を遊ばせる若い男性がいたので話しかけてみたら、近くに住む40代の住民だった。ほとんど毎週末この公園に来て「1日中過ごしている」という。話していると電話がかかってきて、日本の焼肉店「牛角」のご飯が出前で運ばれてきた。彼は木の下に折り畳み式のアウトドアベンチを広げると、昆虫探しをしていた娘を呼び、森の中で出前のランチボックスを食べ始めた。おそらくいつもこんなふうにゆったりと公園で休日を過ごしているのだろう。

北京の中心市街にある「広陽谷都市森林公園」で出前のランチを食べる親子

 私はこうした北京市の一連の「都市緑化」を見て、これは日本で言う「都市緑化」という概念を超えるものだと思った。道路にも公園にも「森」のようにたくさんの大きな木が植えられている。これは都市の「緑化」というより都市の「森(もり)化
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」という方がしっくりくる。

 現に北京市は2024年に、中国政府により「国家森林都市」に認定されている。「国家森林都市」とは、森林植生を都市生態系の主体とし、中国政府が定める厳しい環境基準や緑化指標をクリアした都市だ。「北京が国家森林都市となったことは、根気強くグリーン(環境配慮型)発展に取り組んできたことへの大きな肯定であり、北京の森林都市づくり
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が質の高い発展の新たな段階に入ったことを示す」と北京市政府の程建華副秘書長は述べている(2024年1月9日新華社※傍点は筆者)。こうしたことからも北京市が「緑化」の枠にとどまらない「森化」を意図的に進めていることがわかるだろう。

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 第7回

プロフィール

大澤暁

(おおさわ さとる)

テレビ東京で「WBS(ワールド・ビジネス・サテライト)」など報道番組の記者・ディレクターを担当。現在はジャーナリストとして活動。明治神宮外苑の再開発に近隣住民として反対し、新宿区に対する樹木伐採許可取り下げ訴訟の原告団長を務める。X(旧Twitter)フォロワー3.9万人「ミド建築・都市観測所」(https://x.com/Mid_observatory)を運営。早稲田大学第二文学部卒、京都大学公共政策大学院卒。1983年生まれ。

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