「それから」の大阪 第12回

“自分たち世代の大衆酒場”を追求する「大衆食堂スタンドそのだ」

スズキナオ

大阪の居酒屋情報に詳しい人で「大衆食堂スタンドそのだ」の名前を聞いたことがないという人はあまりいないのではないだろうか。

「大衆食堂スタンドそのだ」は2016年に大阪市中央区の谷町六丁目にオープンした飲食店。老舗大衆酒場のエッセンスを感じさせつつもそれを今なりの解釈でアレンジした店づくりが特徴的で、開店当初から行列ができるほどの人気店となり、アジア料理に特化した姉妹店「台風飯店」と共に、日本各地に支店を増やしつつある。

2021年3月には心斎橋パルコの地下2階にオープンした飲食店フロア「心斎橋ネオン食堂街」にフランチャイズ店を出し、2021年の10月には東京・五反田にもフランチャイズ店を出店するという。コロナ禍にあっても勢いを感じる「大衆食堂スタンドそのだ」のオーナー・園田崇匡さんに、お店のこれまでの歩みや、コロナ以降どんなことを考えているのかなど、様々な点についてお話を伺いたいと思った。

様々な年齢層が混ざり合う居酒屋

筆者も「大衆食堂スタンドそのだ」にはこれまでに何度も足を運んでいる。オープンから間もない頃、「谷六(谷町六丁目のこと)に『そのだ』っていういい飲み屋ができたらしいよ」というような噂を複数の友人から聞いた。実際に行ってみると、大きなコの字カウンターや壁にずらっと並ぶ短冊メニューなどの大衆酒場的な要素と、鮮やかなネオン看板、飲み物の入ったグラスなどに感じるオシャレな雰囲気とが違和感なく共存していて、新鮮なバランスだと感じた。

また、メニューを見てみても、いわゆる居酒屋の定番メニューとは違って、「アンチョビ煮卵ポテトサラダ」「セロリナンプラー漬け」など、一ひねりされたようなものが多く、注文して実物を味わうたびに新鮮な驚きがあって楽しい。

谷町六丁目にある「大衆食堂スタンドそのだ」の外観(2021年7月撮影)

店内には明るいうちから幅広い年齢層の客が集う(2021年7月撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京の老舗酒場で愛されている「バイスサワー」をアレンジしたピンク色の飲み物「バイス」や、よだれ鶏と豆腐にパクチーをこれでもかと乗せた「パクチーヨダレやっこ」など、見た目からして印象的なメニューも多く、SNSを通じて店の情報が広がっていきやすい今の時代にも合っている。また、どのメニューも価格帯はあくまでリーズナブルに抑えられていて、フラッと一杯飲みにいくといった感覚で立ち寄れる雰囲気である。多くの人が締めの一品として食べていく「中華そば」も名物だ。

しそ風味の「バイスエキス」と焼酎を割って凍らせた名物ドリンク「バイス」(2021年7月撮影)

パクチーがどっさり乗った「パクチーヨダレやっこ」(2021年7月撮影)

 

「大衆食堂スタンドそのだ」の客層は年齢の幅が広く、地元の方らしき老夫婦が静かに飲んでいるかと思えば若い女性たちが料理を嬉しそうにスマホで撮影していて、その隣ではスーツ姿の一人客が仕事終わりの時間を楽しんでいたりする。こんな風に様々な年齢層が混ざり合う居酒屋は他にはあまり無いように気がして、その点も新鮮に感じた。

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「それから」の大阪

2014年から大阪に移住したライターが、「コロナ後」の大阪の町を歩き、考える。「密」だからこそ魅力的だった大阪の町は、変わってしまうのか。それとも、変わらないのか──。

プロフィール

スズキナオ

1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』『QJWeb』『よみタイ』などを中心に執筆中。テクノバンド「チミドロ」のメンバーで、大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『のみタイム』(スタンド・ブックス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)がある。

 
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