——「物語のつくり方」「キャラについて」など、かなり具体的なことが詳細に語られていて驚きました。過去の記録を精密に再現しているのでしょうか。
武者 いや、そういうことは全く無いですね。まずは土台をつくるために、僕と藤田和日郎さんで会って、いきなり本題をワーッと語り合いました。「キャラってさあ、これこれこうだよね」とか。長年の付き合いなので、余計な説明は要らなくて、いきなり本題に。ちなみに、私もよくしゃべるように思われているかもしれないけど、藤田さんは倍以上しゃべりますんで。本当にアツく語る方なんですよ。どちらかというと僕は受け身に「うんうん、そうだよね」とか言ってるだけでした(笑)。
1回につき5時間くらいは語ったかな? そういう対談を3回やっています。それから、その前後にも打ち合わせをしっかりやっています。
さらに、藤田さんが持っていた、ボツになった初期の作品ノートを読み返してみたんですよ。そうしたら、読んでいるうちに当時のことを段々と思い出してきて。「ああ、そうだ。この時はこんなことを言った」と。そんな内容も全部反映させました。
その後に、文字起こしを2人でそれぞれ丁寧に読んで、気になるところはもう一回確認したり修正したりしています。だから、あまり厚くないですけど、実はかなり時間をかけて丁寧につくった本です。最終的に、それをとても読みやすく整理してくださったのは構成の飯田一史さんですけれども。
——「先輩漫画家」と「編集者」という2つの立場から、それぞれアドバイスが与えられていくという構図は最初からあったのですか?
武者 正確には覚えていないんですが、たぶん藤田さんは自分だけで喋るのもちょっと気が引けたんでしょう。それに、2人でやっていれば話も広がりますから。
プロフィール
1957年東京都生まれ。早稲田大学卒。1981年(株)小学館に入社。「少年サンデー」「ヤングサンデー」「ビッグコミック」「ビッグコミックスピリッツ」など、これまで編集として数多くのマンガ誌に携わり、「flowers」「Cheese!」では編集長を務めた。編集としてのキャリアは30年を超える。これまで輩出したミリオンセラー作家は、『健太やります!』の満田拓也、『行け!!南国アイスホッケー部』の久米田康治、安西信行、菊田洋之、きらたかし、なかいま強、『うしおととら』の藤田和日郎、『海猿』の小森陽一・佐藤秀峰、『娚の一生』『姉の結婚』の西炯子、『しろくまカフェ』のヒガアロハなど。2018年5月1日にNHN comicoが運営するマンガ・ノベルアプリ「comico」の編集長に就任。2019年4月1日よりNHN comico株式会社代表取締役社長。