プラスインタビュー

ひとりよがりも迎合しすぎもダメ。劇団ひとりにとって「創作すること」とは?

劇団ひとり

自分の得意ジャンルに固執しない

──『浅草キッド』を自分発で実現したことで、逆に今度は向こうからお仕事を頼まれることも増えていますよね。

ひとり ありがたいことに、演出や脚本の話は色々いただくようになりましたね。そこは、もし『浅草キッド』を撮ってなかったら随分違う状況になってたかなと思います。

──『無言館』(2022年の『24時間テレビ』で放映されたスペシャルドラマ)は、日本テレビからのオファーを受けて作った作品ですね。自分発ではない場合の創作はいかがでしたか?

ひとり 最初は無言館に関する知識が全くのゼロだったけど、『浅草ルンタッタ』を書く時に、資料をひたすら集めて、世界観を頭の中で構築することに没入した経験があるので、知らないことでも物語を作ることができる自信がついて。それで無言館について調べてみたら、やっぱり自分発の企画となんら変わらずに没入できた。

 今日もオファーされた作品の打ち合わせがあって、今度はこれまでとは随分毛色の違う、ちょっとコメディータッチのもので。今までは人情噺が多かったので、そうじゃない、例えばもっとライトなものなんかにも挑戦したい。とりあえず、やらせてもらえるうちにはやっておきたい。自分の得意ジャンルしかやってこなかったので、それ以外が本当に不得意なのかどうか確かめるためにも、いろんなものをやっていきたいと思ってます。

──やっぱり、どんどん挑戦をしていきたい、と。

ひとり 得意なことだけやってても偏ってきますから。ずっと同じ引き出し開けてるような感覚になってくるんでね。そういう意味で言うと、ストレッチみたいなものです。無理してちょっとずつ伸ばさないと柔軟性って上がっていかないじゃないですか。かといっていきなり思いっきり曲げちゃうと筋切っちゃう。だからちょっとずつがいい。自分の可能性をちょっとずつでも広げていかないと、飽きちゃいますよね。それは何事も掘り下げられないとも言えて、ビュッフェスタイルみたいな人生だなってよく思う。1個のことを極める人はかっこいいけど、自分は駄目で。絵本書いた後に漫画やって、小説書いて、って色々やりたくなっちゃう。

──でもその時に何をやってもうまくできるのがひとりさんの才能です。

ひとり いや、それはおもしろいと言ってもらえて、世の中で話題になってるものだけを見てくれているからだと思いますよ。世に出ていないものもいっぱいあるんで。当たり外れはあるんですよ。でも、ありがたいことに世の中は外れたものに注目しないので、外れたことさえバレていないんですけどね。

 この前秋元康さんがゲストの番組で、過去に秋元さんが手がけた作詞の一覧を見たら、僕らが知ってる曲って意外と30曲中1曲くらいで。

──それは意外です!

ひとり そう、全部ヒットさせてるイメージあるでしょう? でも実際には僕らが知らない曲もいっぱいあるんですよ。で、前に秋元さんとご飯を食べた時に「天才は多作なんだ」ってことをすごく言ってた。あれは自分のことを言ってたんだろうな(笑)。でも、百発百中が誰にもむずかしいのは本当のことで。失敗から学ぶことも多々あるし。

──では今後も、作品をたくさん作り続けるということですね。

ひとり うん、やらせてもらえるうちは作り続けたいです。時間が経って駄目になったら、誰もオファーしてくれないから、この現状をありがたいと思わないと。世の中は世知辛いですからね。テレビの仕事もそうだけど、オファーをいただいているうちはなんでもありがたくやらせてもらうつもりです。

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プロフィール

劇団ひとり

劇団ひとり(げきだんひとり)

千葉県出身のお笑い芸人。
バラエティーで活躍する傍ら、俳優・作家・監督としても多岐に活動。
2006年発表した小説『陰日向に咲く』は100万部を越えるベストセラーになり映画化。
二作目の小説『青天の霹靂』も映画化されその際、初の監督・脚本を勤める。
最近ではNetflix映画『浅草キッド』や日本テレビ『24時間テレビドラマ無言館』の監督・脚本としての評価も高い。
また最新小説『浅草ルンタッタ』が先日発表された。

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