生まれて初めて見るホワイトハウスはバリケードに覆われ、プロテスターに囲まれていた。
生まれて初めてホワイトハウスに来ました。
集まった人々がひとりずつ警察に殺された人の名前を叫んで、数時間が経ちました。
途方も無い数の人々が権力の名の下に命を奪われてきたのだと体感しています。ミネアポリスとは違う、刺さるような空気が漂っています。#blacklivesmatter#WasintonDC pic.twitter.com/r25Ftawz7j
— 大袈裟太郎/猪股東吾ᵒᵒᵍᵉˢᵃᵗᵃʳᵒ (@oogesatarou) June 11, 2020
集った人々が今まで警察に殺された黒人たちの名前をひとりずつ叫んでいく。次々に叫んでいても、その時間は数時間に及んだ。途方も無い数の人々が権力の名の下、そしてこの構造的人種差別のなかで命を奪われてきた。そのことを体で感じ、受けとめるだけでふらふらになった。実は2020年、いわゆるコロナ禍に入ってから、全米で警察に殺害された黒人だけでも枚挙にいとまがないのだ。
Ahmaud Arbery (アーマード・アーベリー)は2020年2月23日、ジョージア州ブランズウィックでジョギング中に強盗と間違えられ射殺された。SNSで事件の動画が拡散され、2ヶ月後の5月2日に逮捕されたのは元警官の白人親子だった。
Breonna Taylor(ブレオナ・テイラー)は3月13日深夜、ケンタッキー州ルイビルの自宅で押し入ってきた警官に8発の銃弾を受け射殺された。彼女はコロナ医療に奔走する医療従事者であり、冤罪であった(この捜査の容疑者はすでにこの事件発生時には逮捕されていた)。
Dreasjon Sean Reed(ショーン・リード)は5月6日、インディアナ州インディアナポリスで、自動車を運転しながらFBライブ配信していたところを交通法違反で追跡され、背後から射殺された。彼の死後もFB配信は続いており、その中には彼の死を笑いものにする警官の言葉が記録されていた。
そして5月25日のジョージ・フロイド圧死事件に至る。これで人々の怒りは沸点を超えたのだった。
夜がふけるに従い、現場の空気もささくれ立ってくる。ミネアポリスでは感じなかった空気だ。人々がホワイトハウスへ向けて、怒りを突き刺しに来ているように見えた。だってそこにトランプがいるのだ。叫びたいような暴れ出したいような衝動を皆、腹の底に押し殺している。プロテスター同士の揉め事もちらほら見かけるし、目的のわからないフリーライダーの存在もある。
現場でタバコをせがまれたりする。大麻を吸っている者もいる(D.C.では合法)。誰を信用していいのかわからない緊張感。白人至上主義者からテロの恐怖もある。その日は気疲れしてしまって、帰る足取りが重たかった。なんだか途方も無くぐったりしていた。腰が抜けたようになって、アパートメントのベランダで延々とノイズミュージックを聴いて、ふらふらになってそのまま眠った。
翌朝、目覚めて気づいた。昨夜のだるさは大麻だった。ホワイトハウス前で誰かが吸っていた大麻の副流煙で酩酊状態になっていたのだ。それに気づいて、ばかばかしくて少し笑った。
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