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大袈裟太郎のアメリカ現地レポート③ ワシントンD.C.

大袈裟太郎
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 生まれて初めて見るホワイトハウスはバリケードに覆われ、プロテスターに囲まれていた。

 集った人々が今まで警察に殺された黒人たちの名前をひとりずつ叫んでいく。次々に叫んでいても、その時間は数時間に及んだ。途方も無い数の人々が権力の名の下、そしてこの構造的人種差別のなかで命を奪われてきた。そのことを体で感じ、受けとめるだけでふらふらになった。実は2020年、いわゆるコロナ禍に入ってから、全米で警察に殺害された黒人だけでも枚挙にいとまがないのだ。

警官に殺された黒人たちの名前を叫び続ける女性

 

 Ahmaud Arbery (アーマード・アーベリー)は2020年2月23日、ジョージア州ブランズウィックでジョギング中に強盗と間違えられ射殺された。SNSで事件の動画が拡散され、2ヶ月後の5月2日に逮捕されたのは元警官の白人親子だった。

 Breonna Taylor(ブレオナ・テイラー)は3月13日深夜、ケンタッキー州ルイビルの自宅で押し入ってきた警官に8発の銃弾を受け射殺された。彼女はコロナ医療に奔走する医療従事者であり、冤罪であった(この捜査の容疑者はすでにこの事件発生時には逮捕されていた)。

 Dreasjon Sean Reed(ショーン・リード)は5月6日、インディアナ州インディアナポリスで、自動車を運転しながらFBライブ配信していたところを交通法違反で追跡され、背後から射殺された。彼の死後もFB配信は続いており、その中には彼の死を笑いものにする警官の言葉が記録されていた。

 そして5月25日のジョージ・フロイド圧死事件に至る。これで人々の怒りは沸点を超えたのだった。

 夜がふけるに従い、現場の空気もささくれ立ってくる。ミネアポリスでは感じなかった空気だ。人々がホワイトハウスへ向けて、怒りを突き刺しに来ているように見えた。だってそこにトランプがいるのだ。叫びたいような暴れ出したいような衝動を皆、腹の底に押し殺している。プロテスター同士の揉め事もちらほら見かけるし、目的のわからないフリーライダーの存在もある。

夜になっても多様な人々が集って抗議を続ける

彼の全身から怒りを感じた

 現場でタバコをせがまれたりする。大麻を吸っている者もいる(D.C.では合法)。誰を信用していいのかわからない緊張感。白人至上主義者からテロの恐怖もある。その日は気疲れしてしまって、帰る足取りが重たかった。なんだか途方も無くぐったりしていた。腰が抜けたようになって、アパートメントのベランダで延々とノイズミュージックを聴いて、ふらふらになってそのまま眠った。

 翌朝、目覚めて気づいた。昨夜のだるさは大麻だった。ホワイトハウス前で誰かが吸っていた大麻の副流煙で酩酊状態になっていたのだ。それに気づいて、ばかばかしくて少し笑った。

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プロフィール

大袈裟太郎

大袈裟太郎●本名 猪股東吾 リアルタイムドキュメンタリスト/現代記録作家。ラッパー、人力車夫。2016年高江の安倍昭恵騒動を機に沖縄へ移住。やまとんちゅという加害側の視点から高江、辺野古の取材を続け、オスプレイ墜落現場や籠池家ルポで「規制線の中から発信する男」と呼ばれる。 2019年は台湾、香港、韓国、沖縄と極東の最前線を巡り、「フェイクニュース」の時代にあらがう。

 
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