腹から金玉 39歳、目が覚めたらオストメイト ep.15

病人と美容、あるいはただの雑談

2024年6月20日(木)の記録
かわむらまみ

ある日、いきなり大腸がんと診断され、オストメイトになった39歳のライターが綴る日々。笑いながら泣けて、泣きながら学べる新感覚の闘病エッセイ。

抗がん剤の内服がスタートして3日が経つも、服用前と比べて、特にこれといった変化はない。点滴初日にあった手先のしびれも消えてきたし、冷蔵庫の物を素手で掴んだときに軽くピリッと感じて「あ、手袋するの忘れてた」なんてようやく思い出す程度には平常運転。

でも、薬の副作用は吐き気や倦怠感みたいなわかりやすいものだけじゃなくて、気づかないうちに皮膚……特に手や足先、足の裏が黒ずんでしまうケースもあるらしい。そうならないためにも、身体への負担は最小限に留めて、あとは保湿。とにかく保湿。病院から「週に1本ペースで使ってください」と、ヘパリン類似物質油性クリームとやらを3本も処方してもらったので、ことあるごとに腕や脚、ついでに顔にも塗りたくって過ごしている。ヘパ放(※)に加入できたのは、がんになってよかったことその2かもしれない。その1は、入院中に保険適用でビタミン点滴を投与してもらいまくったことです。

※ヘパリンクリーム使い放題プランの意。もちろんわたしが勝手にそう呼んでいるだけで、別に使い放題でもなんでもない

がんになる以前からのポリシーなのですが、個人的に美容ケアで大切にしているのは、心に叶恭子様をお招きすること。以前、恭子様が「わたくしは全身がお顔……」とお話しされていたので、それに倣って「わたくしも足の裏までお顔……」と思いながら、せっせとクリームを塗っています。わたしは心に叶姉妹とギャルがいて、弱ったときには彼女たちに登場してもらうようにしているのですが、イマジナリー叶姉妹&ギャルがメンタルに及ぼす効果は実に絶大。なんか嫌なことがあっても「いや、関係なくね?」「他人の声なんて、風が吹いていると思えばいいのですよ」とか言ってくれて、たしかに〜! って思う。嫌なこと、別にあんまりないけれど。皆さまもぜひ、お一人、お二人ほどいかがでしょうか。

それにしても、iPhoneで「びよう」って打ったら「美容」じゃなくて「病院」って出るようになってしまったの、THE・病人という感じでテンションが下がる。「びよう」どころか「び」って打つだけで「病院」って出るもんね。間違わないように「びよう → 美容」でユーザ辞書に単語登録しようかとも思ったけれど、実際「病院」のほうがよく使うワードと化しているのが現状。自覚が足りていないだけで、ちゃんと病人……

「いや、考えすぎじゃね?」

たしかに。ありがと、ギャル。

そもそも、わたしはiPhoneユーザ辞書の単語登録機能をまったく使いこなせていなくて、唯一「すし」って打つと「( ◜ ᆺ ◝)」が表示されるようにだけ設定をしている。『おしゅしだよ』のキャラクター、おしゅしです。ご存じですか? 可愛いでしょう、使ってもいいよ。もっと有意義な単語登録は山ほどあるかと思いますが。

美容トーク、さして深掘りできることもなかったな。とにかく、足の裏まで毎日せっせと保湿してまっせという話でした。かわむらは全然元気です。明日は会社の健康診断。診断するまでもなく不健康ですけれども。

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あまりにも中身のない雑談に終始してしまったため、今回は少々趣向を変えて、抗がん剤治療によるシミやニキビ、肌荒れの副作用対策としてたどり着いた、2025年1月現在のかわむら個人の最適解を追記しておきます。この日記をつけた日はまだ平和でしたが、やっぱり後からいろいろと肌トラブルが出てきたので。

まずは洗顔。クレンジングはジェルからオイル状のものに変えてしっかりと落としつつ、クレイタイプの洗顔料を使うようになりました。洗顔料、逆に今まで使っていなかったんかい。そうなのです、ずっとジェルクレンジングだけで済ませていました。雑。

それから、化粧水は油分のないさっぱりとしたタイプのものを。抗がん剤治療中はとにかく白ニキビが多発したので、素人判断にはなるものの、油分を控えたほうがいいのでは……という考えに至りました。わたしはONE THINGという韓国のメーカーのツボクサ化粧水を愛用しています。それから乳液、クリーム、さらにワセリン配合クリームを。最初はへパ放に浮かれてヘパリンクリームを使っていましたが、ニキビが爆増したため改めました。ヘパリンクリーム、油分の塊みたいなもんだもんな。最終的に、IHADAの「薬用ナイトパック」というワセリンクリームに落ち着いています。いや、まあ、ワセリンも油分なんですけれど……。

治療中に困ったのは、ビタミンやレチノールなど、冷蔵庫で保管しなければならない成分が配合された美容液やクリームの扱い。扱いというか、CAPOX療法での治療中は基本的に冷たいものに触れられないため、これらは必然的にお休みすることになりました。その分……というわけではないけれど、少しでもシミと戦う成分を補えればと思い、次のクールから病院でシナールというビタミンC配合剤を処方してもらっています。

シミや肌荒れはわたしのメンタルを大いに左右するものなので、できる範囲で気を遣っています。でもさ、肌荒れしたって可愛いよ。大丈夫。闘病をがんばっている人は、みんな、みーんな、世界で一番可愛いです。ギャルがそう言っているので間違いありません。

(毎週金曜更新♡次回は1月31日公開)

 ep.14
腹から金玉 39歳、目が覚めたらオストメイト

ある日、いきなり大腸がんと診断され、オストメイトになった39歳のライターが綴る日々。笑いながら泣けて、泣きながら学べる新感覚の闘病エッセイ。

プロフィール

かわむらまみ

ライター

1985年生、都内在住。2024年5月にステージⅢcの大腸がん(S状結腸がん)が判明し、現在は標準治療にて抗がん剤治療中。また、一時的ストーマを有するオストメイトとして生活している。日本酒と寿司とマクドナルドのポテトが好き。早くこのあたりに著書を書き連ねたい。

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病人と美容、あるいはただの雑談